
約2週間ぶりの御無沙汰映画評。
引っ越しのごたごたと
また例の「映画、見たくない病」が発病で
しばらく静養。
今回は、
まったく僕らしくない映画で
復活。
この後、僕らしくないことを
書くので
最初に、僕らしい嫌味を・・。
ほんと、素敵な邦題。
さらに
DVDのジャケにも
「夢を奏でる、幸せの綴り
先生、本当にありがとう」
もう素敵過ぎて、
センスがなさすぎて
涙が出るわ。
確実に言えるのは
このコピーを作ったやつも
邦題をつけたやつも、
絶対に
この映画を観ていない。
もしくは
仕事で映画を観ている・・。
「マイ・ボディガード」に続いて
大笑い海水浴場の邦題に、
みなさん
拍手をどうぞ!!
信じられないぐらい
毒のない映画です。
悪い人は誰も出てきませんし
悪意に満ちた言葉も
偽善に満ちた行動も出てきません。
恐らく
僕のように
大してひねくれてもいないのに
ひねくれたようなフリをして
知的ぶる、シニカル坊やにとっては
どうでもいい映画・・・かもしれませんが
なぜか
この映画は
素直に見れて
感動するんですわ。
それは
ひとえに
アメリカ映画が持つ物語テクニック。
世界を相手に物語で商売してきた
アメリカ映画の底力。
英語のスペル大会。
TVのニュースや、クイズ番組なんかで
一度は
見たことがあると思います。
難しい英単語を言われて
その綴りを答える。
回答者は
その単語の意味と
例文を
質問することができる。
それだけの競技。
それに勝ち抜いていく少女の物語。
環境劣悪な地域に住み、
母子家庭
母親は
育児と仕事に疲れている。
少女は
自分の、いまに、たまらなく違和感を感じている。
だから
周りの人間との関係もうまくいかない。
さらに
彼女は辛い過去。
そこから
逃げるためにスペルを覚えていた。
そんな彼女が
参加したスペル大会で
その能力が発揮され、
勝ち抜いていく。
ここまで書いただけで
ほとんどのひとは
内容を想像すると思います。
その想像した内容は
ほとんど
当たっていると思います。
つまりは
「ロッキー」展開。
負け犬が、
たったひとつの才能でどんどん注目されていく。
その過程で
出会う、友だち、ライバル・・。
まったくの黄金定番パターン。
しかし、
それが本当に観ていて気持ちがいい。
こういう物語の展開として
最後まで勝ち続けるのは決まっている。
爆弾処理映画の
最後の
本当の爆弾は、爆発しない・・のと同じように
決まっている・・つまり観客はわかっている。
わかっている物語を
おもしろく魅せるには
テクニックがいる。
勝ち登っていく過程にパターンではない
アイディアが必要だ。
この映画は
それがとても巧みでうまい。
もちろん
そこにこの映画のテーマを含ませるという
高等テクも駆使する。
テーマとして提示されるのは
「自分に戸惑うな」
自分のなかにある可能性に
躊躇してはいけない。
さらに
スペル・・つまり言葉に対する考証も展開される。
言葉を覚えるというのは
ただ単に
それを丸暗記するだけではなく
その言葉の持つ歴史ごと覚えなくては意味がない。
その言葉の起源は
スペイン語なのか
ラテン語なのか
そして
長い単語は
短い単語の複合体であり、
意味を知り
短い単語を覚えれば大丈夫である。
この手のアメリカ映画によくある
ライバルをイヤなやつに設定して
主人公を応援させる・・という手法
確かに
その手は使われているが
最後に
お見事な展開によって
ライバルすらも
応援できるようになっている。
これは
お見事としか言いようがない。
単語のスペルを言う・・という行為を
これほどサスペンスを持って描ける
アメリカ映画の底力は
相変わらず健在でありました。