222 「蘇える金狼」  大藪春彦原作という名の、普通のアクション映画 | ササポンのブログ

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大藪春彦。


人間の感情よりも、
歴史的な出来事よりも、
男と女の愛よりも

なによりも
銃と車が重要な位置を占める・・というよりか
それしか書いてない。

SEXとか野望とか
そういうものも
書いてありますが
どうでもいいです。

もう銃と車だけです。
登場人物も実はどうでもいいです。

もう極限のモノフェチ小説。

そういう本が
若き童貞少年には
聖書となるのです。

他の人がやっても、
だめです。

なぜなら
銃と車という無機物を
有機物・・つまり人間以上に
魅惑的な書くなんてことは
はっきりいって
変態のなせるわざです。

絵で描くのは比較的簡単かもしれませんが
小説では至難の業です。

それも、
こんなに長編で・・。
変態です。

そんな
変態小説を
映画化した、この映画。




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当時
大藪春彦と松田優作が
神であった
僕にとっては
もう痺れるような名作でありました。

この映画によって
僕の
映画熱が遂には禁断の8mm製作にまで飛び火。

高校の校舎を
モデルガンを持って走り回る・・だけの映画を
撮ることとなったわけです。


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さて、
大藪春彦の作品の映画化は
ことごとく、すべて
失敗しています。

その確率は
キング原作のそれを大きく上回る・・というよりは
0ですから
比べようもありません。

それは
映画としての出来がいいとか、
悪いとかじゃなく
結局
大藪春彦の名前と登場人物と設定を使った
ただのアクション映画ばかりだから・・です。

前記したように
彼の小説において
人間なんてのはどうでもいいんです。
当然のことながら
その感情なんてのもどうでもいいんです。

ハードボイルド好きの内藤陳が
「こんなもん、ハードボイルドじゃねえ!!」と
嫌悪して激怒する理由もわかります。

とにかく
出てくる男は、
クソ分厚いステーキを食らい
女を抱けば、かならず相手を失神させ
たとえ
無理矢理でも、かならず最後は感じて失神するという
信じられないような男尊女卑世界。

野望は必ず達成されて
権力者はぶっ殺される・・という能天気ぶり。

こんな超アメリカン・・というよりか
ラテンな世界を
当時の日本映画が描けるわけがない・・いや、アニメでも、
無理だ。

なぜなら
人間よりも
車が銃が美しく存在感がある・・なんて思想は
日本映画にはない。

だから描きようがない。



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この映画も
例外ではなく
作り手側の視点は
やはり
主人公の朝倉・・というよりは
スター松田優作に絞られている。

それでも、
彼の日本人離れした肉体造形の美のみを
ピックアップし、
それと銃と車のコラボによって
全編を貫けば
この原作の映画化としてはうまくいったであろう。

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しかし
それは所詮は無理な話。

やはり
まず
どんなにこの映画の前に
松田優作が付け焼刃的に
外国で銃を撃っていても
その扱いに完璧さはない。

それは
「ブリット」におけるマックインを観れば
一目瞭然である。


そして
最悪なのは
車である。

松田優作は
免許を持っていなかったらしいが
そんなのは
監督が
気を使えばいいのだが
才人、村川透も、
そういうところなど
どうでもいいと思っている。

と、いうよりも、
日本の監督で
銃と車にそこまでこだわりを持っている人はいない。

そして
結局、
最後に
この主人公の中途半端な人間らしさが
ピックアップされて終わる・・結果となってしまう。

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僕は
映画としての出来をどうこう言っているのではない。

つまりは
この映画を撮るのなら
なにも
大藪春彦の原作でなくてもいい・・ということなのだ。

まあ当時の彼の知名度を利用しただけであろうが
こういうふうに
小説を利用してもしようがないのではないか・・と思うのです。

それぞれの小説の
他とは違う特徴をちゃんと理解して
それに沿った
映画を撮るべきではないか・・と思うのです。

そこから
まったく見たことのない
新しい映画・・が生まれるんじゃないかと
思うのです。


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