「すべての美しい馬」 Ⅰ (再掲載) | ササポンのブログ

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(老人は)自分がメキシコの砂漠で戦った戦闘の話をし、
自分の体の下で殺された何頭かの馬のことを語って、
馬の魂は人が思っている以上に
人の魂を映す鏡だといい
馬もまた(人間同様)戦争が好きなのだといった。


馬はただ後から好きになるだけだという人もいるが
どんな生き物も
心がそれを受け入れる形になっていなければ、
好きになるはずがない。

自分の父親は、
馬に乗って戦争に出かけたものでなければ
本当の意味で馬はわからないと
言ったが
そうであって欲しくないと思いはしても
どうもそうらしいと
老人はいった。

最後に老人は
自分は馬の魂を観たことがあるが
それは
見るからに恐ろしいものだといった。

それは
一頭の馬の死に立ち会った時に
ある種の条件がそろうと見えるが
それというのも、

馬という生き物は
ひとつの魂を共有しており
一頭一頭の生命は
すべての馬たちを元にして
いずれ死すべきものとして作られるからだ。


だから仮に一頭の馬の魂を理解したら
ありとあらゆる馬を理解したことになると・・・

老人はいう。



コーマック・マッカーシー著
黒原敏行訳
「すべての美しい馬」より