121「クロノス」 デル・トロちゃんのデビュー作!! 鉄人パールちゃん、大暴れ!! | ササポンのブログ

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いま、一番、勢いがあって
金を稼げる監督、ギレルモ・デル・トロ

新作、『ヘルボーイ/ゴールデン・アーミー』の宣伝のために来日して
アニメ、特に宮崎駿おたくぶりを
披露している彼のデビュー作。
一応、『ヘルボーイ/ゴールデン・アーミー』を観たのですが
他の彼の作品で未見のモノを観てから
書いたほうがいいかな・と思い
今回は、
その出発点の
メキシコ時代のこの作品を書きます。
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小説家も
映画監督も、
そのひとのすべてがデビュー作にあり、
作り続ける作品は
そのデビュー作に向けて
成熟していくものです。

ギレルモ・デル・トロ監督のこのデビュー作も
例外ではなく
彼のすべてがあります。


中世の錬金術師によって作られた不老不死を実現するかわり
人を人ならぬ者へと変容させる生ける機械「クロノス」。
天使像に封印されていたクロノスを偶然発見した骨董商人のヘスス(フェデリコ・ルッピ)は
知らずにクロノスを動かしてしまい、
ぜんまい仕掛けの小さなその機械に血を吸われてしまう。
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ぜんまい仕掛けの生きた吸血機械。

もうこれだけで完全に
ギレルモ・デル・トロ ワールドでは
あ~りませんか。

この機械に血を吸われたヘスス爺さん・・。
なんと・・恍惚としてしまったのです。
恍惚のひとであります。
おまけに
若返って・・ばあさんに欲情してしまったのでした。
もう歳食ってから新しい欲望を覚えた爺は
手がつけられん。
もう夜な夜な、この吸血機械に血を吸わせて
恍惚の境地・・・

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そんな気持ちいいものを
あんな爺に独占させてなるものか・・と
もうひとりの金持ち爺が
この気持ちいい機械を奪還してこい!!と
ある男に命じた!!
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出たああああ!!!
鉄人パールちゃん!!
赤くないから、
ただ凶暴なだけだぞ!!

かくして
快楽の吸血機械をめぐって
爺ふたりと鉄人パールちゃんの仁義なき戦いははじまる!!
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しかし
しかし、ちと待て・・。

俺は宮崎マニアだぞ・・
これでは
まるでクローネンバーグではないか・・。
いかんいかん・・

そうだ少女を出そう!!

かくして
可憐な少女が出てきてささやく。
「おじいちゃん、おいたはやめて・・」

たちまち爺は改心。
もうこんな機械はいらない・・
元の枯れた爺に戻るよ・・
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しかし
許さないのが
鉄人パールちゃん。
赤くない俺はただの兇暴なだけだ!!とばかりに
襲いかかってきますが
少女を味方につけた爺は強い!!

かくして
鉄人パールちゃんとロリコン吸血爺の対決だ!!


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冒頭に
ギレルモ・デル・トロ監督のすべてがこの作品にあると書きました。

この作品を観ていると
トロちゃんの可能性と限界が
ちょっと垣間見えます。

ここからは
まあ例の如く
僕の勝手な理論ですので・・。

トロちゃんは
自分が頭の中に描いたビジュアルを
徹底的にこだわるひとです。

7年もの間、ねばって鉄人パールちゃんを
「ヘルボーイ」の主役に抜擢したのも
その表れです。
彼の頭にある「ヘルボーイ」は
パールちゃんであり、
他の人では違うのです。

この映画に出てくる吸血機械の造形も
絶対にこの形でしかいけないのです。

ただ
トロちゃんの限界というのは
その造形に、
あまり思想がないということです。

この作品でも前記しましたが
この映画の世界観は
初期のクローネンバーグのそれと似ています。
しかし
クローネンバーグの
その世界観、造形は
すべて彼の文学的な思想の具現化でありました。

ただトロちゃんのこだわる造形や現象には
あまり思想は感じられない。

つまり
こういう形、すっきやねん・・というだけなのだ。
だからこそ
色々なストーリーに当てはめることが出来るし
それが
個性的な造形世界となって
人気監督に押し上げている。

ただ
その独自の造形も飽きられたら終わりである。
後にはなにも残らない。

そこがオタク監督の弱さである。
同じ無思想の匂いが
オタク監督の先輩、ティムバートンにもあったが
彼は「ビックフィッシュ」において
飛躍的な演出のうまさを手に入れていた。

「ビックフィッシュ」は、
また書く機会もあるとおもうが
この映画のティムバートンは
人が変わったように演出がうまくなってしまった。
そのうまさは、ほとんど巨匠の域に達してしまった。

これから
もしトロちゃんがこの
造形世界を張り子のままで
続ければ
たちまち人気はなくなるだろうことは確かだ。

そのあとになにを手に入れるか・・

それが問題なのだ・・。



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