54  「フレンチコネクション」 空前絶後のスピードマシーンムービー | ササポンのブログ

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監督の
フリードキンが、
ハワードホークスから
「君、チェイス映画を撮ってみろよ」と助言されて、
撮った、
本作は、
もう前人未到のスピードマシーンムービーである。



全盛期のフリードキン監督の演出が、
キレてキレてキレまくってる。
とどまることを知らずに、ぶっ走ってる。
有名なカーチェイスのシーンだけじゃない。
ありとあらゆるシーンが、留まることを拒絶して走り、そして飛ぶ。




まずなにが凄いって
冒頭である。

冒頭のタイトルと
ドン・エリスの音楽である。

観客の意識がまだ映画にはいりきってない冒頭に
いきなりあの音楽である。
へたすりゃキャラメル味のポップコーン
ぶちまける。

つまり横っ面をひっぱたいたのだ。

ここでおいきぼりを食うか
暴走映画にしがみつくかは
観客次第。

作り手に客に対する
馬鹿丁寧な思いやりなど
かけらもない無い。

つまりすでにして
いままでのハリウッド映画ではない。
ニューシネマである。

たとえばだ、ポパイ刑事が、酒場をがさ入れするシーン。
「アイム・ポパイ」とわめきながら、入ってくると、全員を立たせて、
ポケットのなかのもの、カウンターの下に隠してあった薬物を、
全部、テーブルのうえに出させる。
それらをシェイクして、
テーブルの上にガンとぶっちゃける。
薬物やタバコがまじったビールがドロリとアップになる。
ひとりの情報屋を捕まえて、詰問するふりをして、
トイレにぶち込むと情報を聞き出して、言う。
「腹がいいか、顔がいいか」答えを聞く前に、
情報屋の顔を殴ってトイレの外に出る。
「てめえら、いいか。また来るからな」。
そうわめきながらポパイ刑事、退場。

この間、ポパイ役のジーンハックマンは、
わめきっぱなし、動きっぱなし。
カメラもとどまることを忘れる。
丸井のヤング館でローンで買ったソファに座って
コンソメパンチを食いながら
ぼんやり見ているやつなど、おいてくぜとばかりに、
ものすごい情報量が、映像だけで、処理していく。
そうこれがフリードキン。
デビュー前に
テレビ局で
腐るほどドキュメンタリーを作っていて
骨身にしみていた。
映像ですべてをわからせるんだ。
言葉なんかなんの力もない
すべてを映像で理解させろ。

だから、フリードキンの映画で
瞬きなど許さない。

めちゃくちゃに解体された車も、
次のシーンでは
元に戻っている。

刑事の犯人に対する
どうしようもない
怒りも
彼らが売るヤクによって犠牲になった人々・・
なんていう
まったるい方法で見せない。
高級料理店の外で
まずいコーヒーを飲んでいる刑事たち

これでいいのだ。



そのスピードの加速度をくわえたのが、
ジーンハックマンの演技である。
この男、
ふだんは気さくで人柄もよく
親日家の
本当にいいおじさんらしいが、
一端、
フイルムが回りだすと
どんなホラーキャラより恐ろしい
モンスターと化す。
「ミシシッピーバーニング」「許されざる者」
ニタニタ笑いながら、
ひとをボコボコにする。

この映画においての
人でなしさも半端ではない。
君に犯人を逮捕させるぐらいなら
犯人を野放しにしておいたほうが
平和だ・・と思わず思ってしまう。

これは同年に封切られた「ダーティハリー」も同様、
たかがひとりの銀行強盗を射殺するのに
消火栓まで壊す。

この男の辞書に、
交通安全、注意一秒、けが一生という言葉はない。



映像のテンションを落とさないことが、
どれほど
テクニックがいることか・・。
一度でも
映像をいじったことがあるひとなら実感している。
とにかく
画面の隅々にまで
ビリビリするような注意が必要なのだ。

ついてこれないやつは、置いてくぜ。
あんたらを待ってたら、日が暮れちまうし、犯人に逃げられちまう。
まあ、あんたらはかったるい「踊る大捜査線」でも見て、
人気ママブロガーのダイエットの秘訣でも呼んでな(意味不明、ただ上に広告があった)
そういいながらポパイ刑事が、走り去る。


そして銃声・・










蛇足ですが、
廉価版のDVDに入ってる
小池朝雄と羽佐間道夫の
吹き替えも是非
聞いてください。

吹き替えの見本がそこにあります。