「劇場版、トワイライトゾーン」
当時、売れっ子だった監督4人、スピルバーグ、ダンテ、ジョージミラー、そしてランディスが、TVシリーズのときに放映して人気があったエピソード3つと、オリジナル1つ(スピルバーグの逸話)を映画化するという、本来なら、心弾む、娯楽作品になるはずだった。
ランディスが担当する第一話、主演は、サンダス軍曹ことビックモロー。この映画の撮影中に、墜落したヘリの翼に巻き込まれて抱いていた中国人少年もろとも死亡した。この事件、裁判になった。遺族側が訴えたのは、現場の責任者であり、プロデューサーである、ランディス。裁判り結果は、知らない。
この裁判に、共同プロデューサーであるスピルバーグは、係わらなかった。
僕は、そのことが許せなく、しばらく彼の映画を見なくなった。「カラーパープル」も「シンドラーのリスト」も最近まで観ていなかった。
ただまあ、あの場合、仕方がないことかな・・と思い、また見始めた
とにかくこの事件で、ランディスの映画監督としての栄光の日々は、あっけなく終わってしまった。
復帰後のこの、作品を見たとき、あの事件が、彼に及ぼした影響の大きさに、唖然とした。と、同時に、思った。
「やっぱりランディスは、ランディスでしかないのだ」・・と。
何度も書いているが、彼の 映画のよさは、彼の性格の良さ、天成の明るさが、ストレートに画面に炸裂するということだ。現場の楽しさが、画面からはみでてくる・・という点だ。
この映画は、その良さ、明るさが、微塵もない。
数多くの有名映画監督が出たことでしか語られない不幸な映画と、どこかに書いてあったが、それしかないのだから仕方ない。
ギャグは空回りし、残酷さ、陰湿さばかりが目立つ。
妻に浮気されて、眠れなくなってしまった主人公が、ある騒動に巻き込まれて逃げ回る。
最後にこんなシーンがある。
空港で、殺し屋と警官に銃を向けられた主人公が、目の前の顔中ヒゲだらけの殺し屋に言う。
「どうして僕は眠れないんだ」
殺し屋はにやりと笑って拳銃で自分を撃つ。
この殺し屋を演じているのが、ランディス自身。
自分の大好きな映画の現場で、大好きな俳優が死んでしまった。
きっとまわりに、彼のせいじゃない・・と慰めただろう。
しかし、彼は、あのランディスは自分自身で死んだ。
僕の心の師匠の落胆ぶりが悲しい・・。
だから、この文章も、この映画の評になってないと思う。
映画監督というのは、悲しい商売です。
命を削って、心を歪めて、愛想笑いの果てに
作り上げたものが、
つまらない・・の一言で、終わりである。
僕は、基本的に、レビューで悪口を書かない。
嫌いな映画を書かない。
不当に世間の評価が高い連中に対しては、
若干の悪口はいう。どうせ僕が書いてもびくともしない人たちだからだ。
ただそれもできるだけ控えたいとは思っている。
僕は、つまらなくても、他人には生涯ナンバーワンの映画もしれない。
監督の命がけの作品と、観客をつなぐ邪魔だけはしたくない。
そう思いながら書いている。