映画が好きで、この映画を見ていないひとは、幸せであります。
これから観られるのだから。
映画が持ちうる楽しさを、すべてぶち込んだような、それでいてマニアにもうれしい奇跡のような映画。
そして、
ランディス映画のすべてが盛り込まれた映画でもあります。
そうです。
これこそが、ランディス映画、そして、恐らくランディス自身なのでしよう。
「MIB」などにオマージュされたこのおなじみの格好をした、ジョンベルーシーとダンエイクロイドが、暴れまわるコメディ・・といっても、このふたりは、そんなに暴れない。
このふたりが、行く所々で、なぜか敵をつくり、それらの方々が、勝手にまわりで、暴れているだけ、それがまた楽しい。
警察も、ネオナチも、完全にコケにされているわけだが、コケにされている彼らが、とにかく、かわいく見えてしまうのが、ランディス映画だ。
なにをやっても、へたすれば、ひとを殺しても、かわいくなってしまう。
なぜそんな風に見えるのか?
監督が、映画に出てくるすべてに愛情を持っている、そしてそれが画面を見ている観客にストレートに伝わってきて、共有できる。
すべての映画監督が、そうあるべきなのだが、できるひとは、そんなにいない。
映画のストーリーは、単純というよりは、大して意味がない。
映画は、しっかりとしたストーリーの上に成り立っているもの・・なんて思っているひとがいたら、つまらない、退屈だと思うかもしれない。
構成的にいえば「不思議の国のアリス」です。
刑務所から出てきたジェイクと仲間のエルウッドが、シャバという、アメリカという不思議の国を走り回る。
まわりで、愉快なやつらが、歌い、踊り、破壊する。
さて、その愉快なやつらの顔ぶれがものすごい。
ジェイムス・ブラウン、アレサ・フランクリン、キャブ・キャロウェイ、レイ・チャールズ、そしてスピルバーグ、フランク・オズ、キャリー・フッシャーなどなど。
特にジェイムス・ブラウンが歌い説教する、教会のシーンは、恐ろしいぐらいに、楽しい。ちらっと若き日のチャカ・カーンも映ってます。
アレサ・フランクリンの食堂のおかみさん、レイ・チャールズの楽器屋の主人・・もうここが映画のクライマックスだとばかりに、歌い、盛り上げる。
こんな、いい意味でいえば、個性の塊、裏を返せば、我がままの帝王、女王たちを、自由に操ることができる魔法使いは、ジョン・ランディス以外、ありえない。
映画の楽しみ方は、色々で、
どんな映画が存在してもいいし、
どんな映画が好きになってもいいけど、
僕は、この映画を楽しめないひとと、
映画の話はできません。
暴言であることを承知でいえば、
この映画を楽しめないひとは、映画の楽しさがわかっていない・・と。
「2001年 宇宙への旅」をわからないと言ってもいいが、
この映画をわからないとは言ってほしくない。
さて、こんな凄い映画を作ったランディスも、ある事件をきっかけに
恐ろしいほどあっけなく、凡庸なひととなってしまいます。
それは、またねくすと・うえんずでぃに・・。