この映画の登場人物の名前は、すべて職業です。
ドライバー、刑事、ギャンブラー・・。
彼らの行動哲学や倫理感は、すべてそれぞれの職業のそれと同じであります。
簡単に言うと、ドライバーは、依頼人を、車に乗せて、逃げる。乗ってきたのが、誰であろうと、犯罪者であろうと詮索はしない。
ギャンブラーは、ただ賭博するだけ。相手が誰であろうが、その人物から金を巻き上げることのみ。
刑事は、こいつが犯人と決め付けたやつを追いかける。
こんな3人の行動ラインが、ある事件をきっかけに、交わった。
刑事は、犯人の逃亡を助けたドライバーを追う。
ギャンブラーは、その事件の目撃者。
ギャンブラーは、女。なので、ドライバーとの恋愛状態・・にはならない。
なぜなら彼らの感情は、その職業の感情。ドライバーも、ギャンブラーも恋愛はしない。だから、彼らは出会っても恋愛なし。もし女が娼婦なら、セックスしたかもしれないが、ギャブラーだからしない。
この映画の脚本、監督はウォルターヒル。
「ストリートオブファイヤー」「ウォーリアーズ」「ジョニーハンサム」「48時間」
この映画ほど、極端ではないが、ほとんどの登場人物は、職業的な行動倫理に従って行動している。
保安官は保安官らしく。悪党は悪党らしく。
普通のひとが見れば、紋切型としか映らない人物設定。
しかし創作者、特にシナリオライターにとって、この人物設定は驚異、特に「ザ・ドライバー」は、驚愕なのです。
こんなシンプルな人物設定でおもしろいドラマができるのか?
僕は、名画座でこれを見て、腰が抜けそうになった。
あまりにもシンプル、感情というやつが一切ないのだ。
行動だけなのだ。
これを、くだらないと思うか、すげえと思うかは、人それぞれ。
僕は、素晴らしすぎて腰が抜けた。