いやあ、もう楽しい楽しい。
もう見ている間じゅう、楽しんだ楽しんだ。
これはいままで、全然成功しなかった筒井康隆の完璧な映画化であります。
思春期に、闇の中で心躍らせながら読んでいたあの筒井ワールドが、もう総天然色でスクリーンに躍動しているのでありますよ。
ここまで書きながら、一体、どこにポイントを絞って書こうかとまだ悩んでいます。
一読すると、とても楽しく魅惑的で、淫靡な筒井文学を、映像化したいと思うひとは多い。実際、数々の映像化がなされている。
しかし成功しているのは、比較的、おだやかで筒井毒が薄い、実写とアニメの「時をかける少女」のみ。
大昔に中村幻児がやった「ウィークエンド・シャッフル」がおしいって感じ。あとは、本人が出演した者も含めて、死屍累々。
なんでか?
簡単にいうと、そのままやっちゃうと、下品なんですよ。ただ、ただ、もう下品になってしまう。それを一度、監督のなかで消化して、そのひとなりの知性で、分解、再構築しないと、だめ。ただ表面だけでやると、ただの下品が出来上がる。
この「パプリカ」は筒井ワールドを、今敏監督がしっかりと消化、そして彼の周りの世界一の作画軍団がその意図を汲んで、しっかりと暴走・・いやはや、こんなに楽しい妄想暴走は「エルトポ」以来だ。
イメージやストーリーテリングの分析は、別の機会にするが、今監督のアプローチを解く鍵として、主人公の声の古谷徹氏の存在がある。
いままで演じたことのない役に迷っていた彼に、今監督が「アムロでやってください」と言ったといいます。
そうか・・あの巨漢なでぶは、現代のアムロレイなんだ。たしかにオタクが極まった天才というのは、もろアムロレイ。だから僕は、非難が多いあの声も、不思議に違和感がなかったんだろう。
イメージのなかで、あの縛りつけられた敦子の身体に、ムニュと手が潜入するときに、挿入部が、しっかりと女陰の形に割れるところがよい。いやはや芸が細かい。
思わず「ビデオドローム!!」
ほんと、楽しい楽しい。
こんな楽しい映画も久しぶりである。似た感じはやはり「アリス・イン・ワンダーランド」だろう。
こういう映画は、もっと楽しまなくてはならないので、また書こうかなと思う。