「文学少年のまにまに」
緑の葉擦れがありました。
女の子が泣いています。
“どうしたの?”
聞くと、女の子は泣きながら
“猫がいなくなったの”
と、言いました。
鈴は付けていなかったの?と聞くと、涙を拭いながら。
「付けていたわ。いっぱい付けていたわ」
とてもとても可愛いかったから、首に足に尻尾に大小様々な
56個の鈴。
大音量でシャラシャラ鳴って
迷惑だっただろうな、と思いながら
「じゃ、その子は自由になれたんだね」
そう言って笑んで見せました。
めでたし、めでたし――――
「何がめでたいんだろうなぁ、猫逃げちゃったのになぁ…」
呟きは誰に届く事も無く、地面に落ちて消える。
春、入学したばかりの高校で中庭のベンチを占領して意味のわからない児童書を読んでいるのは霧島紫。
紙媒体の物は大抵好き。ファンタジーからエロまで児童書からタウ○ページまで読む変体である。
ちなみに、取り上げると発狂する等の特殊な性癖は無い。
ただただ、なんとなく、『本を読んでいる』のである。