ご満悦な探偵~やきとり酒場 本店編~ | 笹郎(ササロー)のゆるゆるご当地コラム

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東京都渋谷区笹塚の応援キャラクターの笹郎(ササロー)の
地域の魅力再発見!をテーマにご当地を紹介するエッセイ的コラムです。
たまに趣味のやつも。

右斜め+L+R+L+R+L+L+R+R+Aな視点でゆるっと紹介する
ゆるゆるご当地コラム…始まるよぉ!

 

 

何年も前から行きたかった居酒屋にやってきた。

 

うーん、これ以上ない日本過ぎる店構え。

年季を感じる白鶴の表記と電話番号入りの看板に赤提灯。

今風な店名ながらも、結構な趣を感じる。

こういう風に構えられてしまうと、どうも自然と口角が上がってしまう。

そう、仔猫と対峙した時に似ている。

 

こちらは沼津駅南口から少し歩いた所にある、焼鳥酒場本店。

地元でも有名なお店だそうな。

お仕事を終えた方々が丁度ここに辿り着くであろう

19時前後では満席になっており、過去2回トライして入れなかった事があった。

そんな訳で、今日は個人的に3度目の正直という訳だった。

 

今回は準備万端。

早々にホテルでチェックインを済ませ、開店と同時くらいに来た。完全にここ目当て。

明日は午前イベント、夕方もイベントでダブルヘッダーだというのに。それに注力せぇ。

 

威風堂々、暖簾をかき分け入る。

店内は外観の通り、昔ながらの居酒屋という感じ。

全体的に暖色系の照明で照らされており、また奥行があり結構広い。

 

見渡すとやはり、この時間帯でも半数は埋まっていた。

おーおー、テーブル席はもう盛り上がっている。

ほーほー、カウンター席も6割だな。

 

案内されカウンター席に座る。

 

 

カウンター席の頭上には、なんと小さな瓦屋根と暖簾が。

お店の中なのに更に軒先が形成されており、その軒下で飲むスタイルとなっている。


奥行きが絶妙なテーブル。妙に足が高く、背もたれが小さすぎる椅子。

厨房が見え、職人さん達の息遣いを感じる距離なのも良い。

更には謎の置物も目の前にある。完璧だ。

 

慣れ親しんだ大衆割烹という感じ。

初めて入ったはずなのに急に馴染んだ。

 

 

本日のおすすめメニューを頂く。

 

真っ先に刺身という文字が目に付いた。

沼津と言えば駿河湾が近い。目と鼻の先にある。

新鮮で美味しいのは180%確定している。

 

だが今日は違う。そういう気持ちで私は訪れていない。

3回目でようやく来た焼き鳥の店なのだ。

焼き鳥が良い。そう、魚ではなく鶏を感じたいのだ。

 

いや、そもそも海が近いからといって魚料理という考え方はあまりにも安易過ぎる。

なんだい、マダイだのカンパチだのイサキ…え!?い、イサキあるの!?

 

ええい、惑うな私よ。鮮魚はまだ時期尚早だ。

 

小アジ唐揚にマダイ カブト焼。

え、シマアジ カマ焼き?カンパチ カマ焼だって?

 

くじけそう。

 

時期尚早という言葉を使う事自体が時期尚早なのではと

疑問に思うくらい、これ以上ないパワーワード。

 

なんだい、この焼き3連コンボは。

見えるだろう、著者が今まさに天を仰ぐ姿を。

掴むんじゃないよ、呑兵衛の心を。日本酒が無いか探しちゃったじゃないか。

 

考えたたら負けなので、そっと手で伏せてグランドメニューを開く。

 

 

とりあえず静岡麦酒。

知る人ぞ知る、SAPPOROが製造している静岡限定ビールである。

 

缶などでも販売はされているが

地元民か呑兵衛ぐらいしか知らない結構マイナーな銘柄だったりする。
沖縄のオリオンや北海道のサッポロクラシックなどの地域限定系と比べると特にマイナー。

逆にそのレアさが静岡に行きたくなる原動力にもなったりする。

 

う~ん、フレッシュ。

この爽快さは静岡おでんにも魚にも焼き鳥にも合う。

 

よし、注文もしちゃおう。勿論、焼き鳥で。

すみません、やげん軟骨とぼんじりとせせり、1本ずつ全部塩で。

 

 

無茶苦茶良い。

私は長年、これをずっと待っていたのだ。

これ以上ないというくらい、焼き鳥って感じ。

焦が少なく丁寧な焼き加減なのが伺える。

 

まず、ぼんじりから頂こう。

 

プリっと歯応えにジュワっと油感。う、うみゃーだ。

特に塩加減。いや、塩そのものがとても美味い。

なんだろう、丸みのある塩味の先に旨味を感じる。

 

使用されている塩に関するヒントがないか、お品書きを見ると

どうやら、内モンゴルの塩を使用してるらしい。

静岡では井田塩など歴史のある塩が存在するが

あえて、この塩を使うという事は色々と試行錯誤したゆえにという事か。

体現したい味があるのだろう。その結果が結びついている。

 

せせりも素晴らしき歯応えに塩加減。うみゃーだ。

厳選された素材にこだわりの塩。シンプルイズベスト。やはりこれには勝てない。

 

そして最後にやげん軟骨を頂く。

 

マジか、うおおお!!!

 

率直に言うと、ササローの猫生の中で一番のやげん軟骨。

硬過ぎず良い“しなり”加減。その先にコリっと感が待っている。

妙に硬くてバキバキ噛みながら食べる軟骨が多いが、ここのはしなやかな食感がある。

うみゃーだ…うみゃーだトライアングル▲

 

久々に唸るレベルの焼き鳥。

散々食べてきたが、ご馳走レベルの焼き鳥に出会った事は実はかなり少ない。

特に素材・塩加減・焼き加減、この三つが完璧に揃っているお店はまず無い。

繁盛店だと“焼き”が雑になる所があったりするのだが

やきとり酒場は、これだけ繁盛していても丁寧に焼かれている。

 

いや、来れて良かった。

 

 

あっという間に消えゆく静岡麦酒。

いつかは消えてしまうという、この世の無常さをビールで知る。

 

 

デュワーズハイボールを頂く。

この後、クラフトビールの調査があるのでビールは1杯だけにした。

 

癖つよのスコッチだが炭酸で割る事により、その癖が弱くなる。

バーボンやジャパニーズウィスキーとはまた違う、香りと清涼感があって良い。

 

ハイボールの香りにも負けない焼き鳥。再度評価が上がる。

 

 

本日のオススメから、もう一品追加。

 

これまた渋い、梅ナンコツである。

なんだろう、鶏のお店なのでサメではなく鶏の軟骨なのだろうか。

 

なんかこう、出先では攻めがちである。

新たな発見は自身の中の価値観を広げる。

その広がりから、更に枝分かれ的に展開されていく。

そうした知見を得る事により、猫生がより面白くなっていく。

失敗であっても、それはそれで学びになる。無駄な事なんて一切ない。

 

なんて、ほろ酔い気分でぼんやり考えながら梅ナンコツを頂く。

 

う、うみゃーだ…!

 

刻まれた軟骨の食感がべらぼうに良い。

これだけ細かく刻まれていても、キチンと一粒一粒弾力を感じとれる。

これ、普通に軟骨を食べるよりコリコリが強いかも。

更に梅和えという事で、噛めば噛むほど梅の酸味と香りも存分に味わえる。

これはよく考えて作られている。

 

 

実は更に頼んでおいたニラ肉巻き。

良い感じにちょびっとサイズ。

 

現代の居酒屋では安くてボリュームがあるのが当たり前になってきているが

手でつまんで簡単に食べれるサイズの方が酒の肴の原点だと思う。

酒の肴は酒の肴であり、食事とはまた別物。

ヒョイっとつまんでクイっと飲む。

このサイズ感こそ、つまみの神髄というかあるべき姿ではないか。

 

と、言いつつも安くてボリュームあるのもやっぱり良い。ごめんなさい。

 

肉は香ばしく焼かれており、中のニラもしゃっきり歯応え。

ほどよくニラの香りも活きている。うみゃーだ。

 

しなしなっとしたニラが多い中、久々に食べ応えのあるニラに当たった気がする。

やはりここの職人さんはどれも手を抜かず、キチンとこしらえている。

 

 

陸ハイボールで更に加速する。

3杯目はちょいと硬めなのが良かった。

 

しかし、ここ近年では陸ハイボール率高くなってきたな。

前まではトリスかブラックニッカか角ばかりだったが

いつの間にか陸かジムビームが定番になってきている。

この流れでバランタインとティーチャーズも流行って欲しいぞ。

 

 

美味しかったなぁ。

いや、やはり美味しかった。

あのやげん軟骨は美味しかったよなぁ、うん。

 

お気に入りのお店で食事し、そして食べ終わり、店を後にする時に

『美味しかったなぁ、次いつ来れるかなぁ』という感想が脳内に出るじゃないですか。

あれですね。あれが店に居るのにも関わらず急に出てきたんですよ。

数十分前に食べた、やげん軟骨の記憶が突如降りてきたんですよ。

 

もう一度食べたい。あの味を。

次いつ来れるか。いや、今居るじゃない。それなら注文しちゃいましょ。

ちょっと変化球入れてスナギモとつくねも同時に行こう。

 

すみません、やげん軟骨とスナギモとつくね、1本ずつ。全部塩で。

 

少しすると、おろしと醤油がやってきた。

つくねは塩を選ぶと大根おろしが付いてくるそう。しかも、うずらの黄身付き。

串一つになんとも贅沢。やはり味へのこだわりがここにも。

 

混ぜ混ぜしつつ、やってくる焼き鳥達を迎え撃つ準備。

 

 

いよっ、待ってました。

お店に居ながら、恋しくなる焼き鳥。

 

お初なスナギモから、いってみよう。

 

絶妙な塩加減の先にスナギモ独特のシャリシャリ感と肉汁。

噛めば噛むほど肉汁が~と、よく形容されるがまさしくその言葉が相応しい。

臭みもなく、やはり美味しい。

 

いや、これも大当たりだな。

きっと、全部大当たりなのだろう。もうね、全種類制覇したい。

焼きとん部門もあるので、次回来た時は絶対ここで骨をうずめようと誓った。

 

 

つくねはお約束通り、うずらおろしで。

 

これだ。

つくね1ぐらんぷり優勝。

 

大根の辛みの後に黄身のマイルドさ。そして、つくねの塩味と香り。

和の極みというか焼き鳥の王様というか味の最終地点。

著者も何を書いているのか分からなくなってきたが、とにかく一つの完成品だと思った。

 

やきとり酒場では、おみやげも可能という事らしいが

これ、お家で食べたらこの評価にはならないな。

 

焼いた直後、湯気が立ちのぼり、熱々で炭火がほのかに香る今まさにこの状態で

うずらおろしでサッと頂くこの瞬間のみに輝く魂みたいな物がある。

 

いや、参った。

 

 

うずらおろしは割と余る。余ったらこうするしかない。

 

やはり大根よ。大根力よ。

七味とか胡椒などではない、ゆったりさっぱりとした辛さ。

これが大根だけだと辛過ぎる。そこに黄身。君が居てこそ。

マイルドな味わいに、ほんのり大根スパイシー。

 

肉々しさとコリコリと鮮烈さ。うみゃーだトライアングル▲

この組み合わせを発見した自分に拍手喝采。

 

もう、この1軒目で終わりにしたい。ハシゴなんてしたくない。

ハシゴ用に用意した資金を全部ここにつぎ込みたい。

満足いくまで、お腹パンパンでベロンベロンになりたい。

 

いや、逆に満足すると満たされてしまうな。

満たされてしまうと満足してしまうからだ。

ちょっと足らないくらいが、また静岡に行きたくなる原動力にもなったりする。

あ、静岡麦酒と同じ事を言ってら。

 

ここ最近で一番、ご満悦な探偵であった。

 

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【お店情報】

やきとり酒場 本店

 

住所:〒410-0801 静岡県沼津市大手町3-5-4

電話:0559635113(予約可)

営業時間:月~土 17時00分~23時00分

定休日:日曜日

※支払いは現金のみ

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