冨樫義博展 -PUZZLE- 公式図録 | ばんぶーのブログ

冨樫義博展 -PUZZLE- 公式図録

「冨樫義博展 -PUZZLE- 公式図録」

価格:2,500円(税込)

判型:A4サイズ 

仕様:ソフトカバー

ページ数:カバー+表紙+中面176p

 

この本は簡単に言ってしまえば、“冨樫義博展に行った気になれる本”かもしれない。

この公式図録に展示物の全てが収録されている訳ではない(奥付に記載あり)が、

・幽遊白書、レベルE、H×Hという3作品の原稿が多く収録

・冨樫メモを基にした「念能力設定資料」(2pのみ)

・作者直筆の「御礼」メッセージ

・「芥見下々、荒木飛呂彦、石田スイ、尾田栄一郎、吾峠呼世晴(敬称略)」らによる寄稿

・先生が20歳の頃に週刊少年ジャンプに投稿した時のプロフィール

・幽助とゴンの描きおろしイラスト(恐らく展覧会用のもの)

―等が掲載されていたりと、結構満足できるものだった。

 

先日レビュー(?)した「冨樫義博クロニクル」が全8巻で1巻目が681円(税込)で内容が控え目に言ってウ●コだったため、それを揃えるくらいなら断然“クロニクルしている”こちらの方をお勧めする。

(ただ購入方法が、展覧会に行くか、展覧会に行く知人に買って来て貰うか、オークションとかで買うか等に限られてしまい、この記事を書いている時点で元値の倍近くを当たり前の様に設定している出品者もいるので…微妙なところ。)

 

■念能力設定資料

核心部分ともなる今回買うきっかけとなった冨樫メモを基にしたという「念能力設定資料」(2pのみ)だが、一言でいえば“読み物”としては結構面白かったと思う。

この公式図解を仮に「真」とした場合、作中の描写のどこと衝突するのか。

自身の念解釈とどこが違うのか、自分の解釈に明らかな矛盾はないか、作中描写をどう解釈すればその「真」に辿り着けるのか、あるいは辿り着きようがないのかなど、高校・大学時代によくやっていたディベートの準備段階の自身の主張の“粗探し”を思い出して楽しかったですね。

 

そして本図録の念能力設定の基となっている「冨樫メモ」なるものは、やはり作者が実際の物語の肉付けをする前の仮設定なのではないかと個人的には感じました(そこから実際に詳細を考え検討を重ねていく中で変化しており、作中の実際の設定とは異なると考えている。理由は後述。)

 

ただ、結局のところ現時点では念能力設定資料が正しいのかどうかは判断が出来ないのかもしれない。

しかし、ちょうど今ノブナガが刀を抜いており、仮に次のNo.393でお披露目がなかったとしても、作者ツイッターからNo.398でも刀を持つ人物が描かれているためノブナガの能力披露もそう遠くはないと思われる。

 

今回の念能力設定資料の内容が現在も“生きている”とすると、少なくとも私の念解釈には性転換レベルの大手術が必要になるので、検討しつつ一旦私は待ちの作戦を取りたいと思います

 

そんなところで内容へ。

 

■3枚の冨樫メモとそれに基づいた念能力設定資料

まず、明確に何枚の冨樫メモが提供されたかは言及されてはいない。

しかし、この設定資料の中に3枚のメモが貼ってあり、読者が確認出来得るのは3枚のみということだ。

※それぞれのメモに1~3の様な番号は元々振られておらず、便宜上私(ブログ主)が振ったもの。

 

そして、その3枚のメモの内容を読める範囲(文字が潰れて一部判別出来ないところもある)で確認してみると、個人的にはどうもメモとはニュアンスが違う説明念能力設定資料の中にいくつかある様にも感じた。

 

まず、各能力者が属する系統には、


「属性円」「極(きわみ)」>「天賦」>「秀」>「優」で表現できるという各能力者の評価と共に一部のキャラクター達の六性図上の位置がメモ1で示された。

 

「優」~「天賦」に関しては、生まれ持っての習得速度や早さや身体能力の高さ、精神力を踏まえて現時点(作中においての“ある時点”)での評価であるのに対して、「極」はその系統の真髄とも言え、そこに達するかどうかは巡り合わせや努力など、他の要因も大きく絡んでくる

―とメモ2では触れられている程度なのだが、念の能力設定資料では「能力の強さを相対的に表したものではない」まで踏み込んでいる。

言いたいことは分かるし、そう採っても間違いではないのだろうけど、この評価は特に同じ系統間の属性円の話をしており、強化系の様な特に単純な能力を考えた時に「優」と「極」のAP強化系(ぶっちゃければ念を込めただけのパンチ)の能力を考えた時、恐らく高確率で「極」の方が強いかとは思われる(これは強化系だけではなく放出系の単純な能力にも言える)

 

確かに他系統(特に操作系や具現化系)においては、戦略も考慮すべき能力もあるから一概には言えないのはわかるが、メモにない言葉を使ってまで「踏み出す」のはややリスキーの様に感じた。

(個人ブログレベルとかなら、まだアリなのでしょうが、一応“公式”を名乗っているので…。)

 

「冨樫メモ」と共に、冨樫さんと話す機会があってその内容も踏まえているなら良いと思うが、より箔が付く「鶴の声」の存在を示さないのは疑問であり、あくまでこの念能力設定資料も「冨樫メモ」を基にしていることを強調している様に思われた。

また、書かれている内容は一部、“踏み込み過ぎている”と感じる部分はあるが、基本的には上の3枚のメモの内容のみのため、実際に提供されたメモも3枚のみなのかと思われる。

 

また特質系の「極」について。

本設定資料の中では、

他系統とは異なり「属性円」の中に位置していたとしても、能力の深化が進まないケースも見られる。六性図で本来特質系が習得不利とされる位置にある能力の修練が「極」への覚醒の条件となることもあり、一概に判断出来ない複雑さを併せ持っている

とあるがメモ3では(判読しづらい文字もあるが)

特質系は他系統とは異なり、位置による不利が覚醒条件になる事もあり、より複雑(?)な反応を示すため特異点(?)の効果が正しく現れるとは限らない

といった程度にしか触れられていない。

 

設定資料の中では“「属性円」の中に位置していたとしても”と触れられているが、そんなことはどこにも書いていない。

メモ3の中で、1系統の属性円に位置する者はその深さによってその系統の真髄(=「極み」)に到達する可能性が増す可能性が示されたが、その一方で2系統の丁度中間に位置する者(バランサー)は両方を効率よく習得でき、その修練(恐らくその2系統の修練)を一定期間持続する事が「極」に達する条件となる事も多いと示されている。

そして、バランサーの様な特質系能力者の存在に付いては触れられておらず、元々バランサーだった者が後天的に特質系になった場合など不明なのである。

確かにメモ1では自属円の外にいる特質系能力者は1人もいないが、暫定37巻で仄めかされた特質系能力者の念習得率が1つではない(恐らく5パターン)ことを考慮すれば、この六性図では書きようがなかったのかもしれないと個人的には考える。

 

さらに設定資料の中で、“バランサー”という作者が用いている固有の代名詞に逆に触れないのも謎。

如何にも読者が好きそうな言葉な気がするけどなぁ。

 

また今回の設定資料の真偽(全てが現在も“生きている”設定かどうか)の核心部分にほんの少し近づく様な気もするが、158~159pで現在の王位継承編の登場人物達を派閥ごとにまとめて出しているのが、非常に中途半端なのだ。

元々、ベンジャミンの私設兵の中で2人名前が明かされていない者が居て、その者達の名前も明かされるのかなと思ったのだが、明かされなかったのだ。

 

脚注によると対象はNo.340~390、所属・顔・名前のうち2つ以上が判明しているキャラクターからピックアップしたというが、ジャンプ流のDVD内の様子から各陣営の一覧表があることが明かされており、多少のネタバレもありなら名前くらい出した様に思われるのだ。

 

そのため、作者側もしくは公式図録の制作陣の中で一定の線引きがあるのかと思われ、これまであまり“直の解答”を出して来なかった作者が、再開後登場&能力披露しそうなノブナガについてもネタバレの中でも更にはフライングネタバレをしてくるのかなぁという疑問が強い。

(それも基本的には展覧会に行った人だけが知れる情報として公開するのだろうか。)

 

そのため、言葉として作中では登場しないものの作者の中では“生きている設定”もあるのだろうが、“既に死んでいる(途中で変わった)設定”もあり、あくまで初期設定として出して来たのではないかと感じた。

 

ちなみにだが、本公式図録の解説協力として2004年に発刊されたハンターズガイドでもお世話になった(?)、例の樹想社という編集プロダクションが関わっており、どこを解説しているかはわからないが上述の“踏み込み過ぎている”部分等は恐らくそうなのかと感じた。

 

ただ、どの段階の設定メモなのか作者がどの段階でどこまでは考えていたかは結局はわからない。

王・護衛軍・コムギ・アルカの情報も含まれているため、一見後期に作られたメモにも感じられることから、それより前の編で登場したキャラクターは既に検討を経た後の情報であるため「真」だと採れなくもない。

 

しかしメモの中でキャラ絵はなく“名前のみ”である。

アルカは、イルミ→ミルキ→キルア→アルカ→カルトという尻取りから早期に決まっていたであろうし、未来を有望視されるキルアが念能力未収得であったこと、5兄弟の中でアルカのみ登場しなかったことからハンターハンターの物語の大枠は初期に決まっていたのではなかろうか。

・カイトに救われ死んだと聞かされていた父親が生きていてハンターだということを聞く

・何らかの約束を果たし、父親を探すためにもハンターを目指す

・ハンター試験

・キルアがおかしくなり、ゴンは合格するがキルアは不合格

・キルアの家に行き、5兄弟の内1人だけ登場しないキャラクターがいる=アルカ

 恐らく当時はアルカの能力として考えていたからアルカが特質系能力者の「極」となっている

 →後に検討の上、ナニカ(アイ)の能力に変更?

・力試しと裏試験で闘技場にいき「念」を習得

・クラピカにスポットライトを当てたヨークシン編

 クラピカの相手の旅団として強化系の特攻隊が望ましい(鎖が切れないかの確認のため)

 →特攻のウヴォーとノブナガを強化系に設定?

・主要キャラクターの強化とジンへの手がかりとしてGI編 師匠役としてビスケを想定

・GIクリア報酬でジンの下へ行くつもりがまさかのカイトのところへ

・異変発覚、カイトと一緒に問題解決へ

・敵が強大でカイト死亡、ゴンたちは大敗

・再修業編 ビスケ登場

 また少数精鋭としてネテロ会長とその弟子+α

 敵のボスとしてメルエム

 →最初にサイコガンを撃つシーンが浮かびとりあえず「放出系」に設定?

 またその護衛軍として、ピトー・プフ・ユピー(恐らくカロリーヌ絵本が名前の元ネタ?)が付き、キーパーソンとして無敗の棋士・コムギを(盲目の碁のみに特化した能力者=思考能力の強化で強化系能力者に設定?)

・そしてゴンが命を懸けてピトーを倒し、それを救う過程でアルカ登場

・治療されたゴンがジンに会って物語は一旦終わり。

―といった感じで。

 

何故かノヴとモラウとその弟子、ナックル・パームがいる中、シュートだけ居ないのも検討の途中で“増えたキャラ”だから、という理由かもしれない。

(もちろん、この情報は「真」で先生が書き忘れただけ、という可能性もあるのでしょうけどね)

 

そして、各能力者の系統分布には疑問が多いのだが、能力披露が近いであろうノブナガが強化系(強化と変化の間で強化寄り)というのは激しく疑問なのだ。

先日の記事でも触れたが、むしろ原作を読む限りではノブナガは少なくとも強化系ではないと思われるのだ。

・旧旅団13名の中、腕相撲は“弱くもないけど強くもない” (=9位)。

・ 「“奴ァ強化系でな」とウボォーを振り返り、 喧嘩になっても“素”の殴り合いではボコられっ放しで、 さらにはゴンに対しては“強化系バカにャ”などと述べる。

・また戦闘時、操作系能力者が多くの場合用いるという「口頭での命令」を挟む。

・ BW号にわざわざ刀を持ち込み、フィンクスらが刀を回収していないノブナガ“の”御守を買って出ている。

 

もちろん、これまで作中でも自系統とは異なる能力も用いる者(パームやサイールド)や、一見真逆の系統の能力を用いる者(特に放出系能力者が具現化物を用いるケースが多い)も出てきたが、前者は比較的早期に回答を出して来たし、後者その能力の核心部分が明らかに一見される系統とは異なったり、別の情報からその術者の系統を推定することが出来た様に思われる。

逆に原作をどう読めばノブナガを強化系、それも強化と変化の間と読み取れるのだろう―という点がすごく気になっています。

 

そのため、ひとまずノブナガの能力披露を待つものの、今回の念能力設定資料の中で示された各能力者の系統分布図は“昔の初期設定なんじゃないかなぁ”というのが現時点での印象です。

 

 

以上でぇす。

p.s.

これ書いている時に「てんぶ」←何故か変換されない

―をリアルにやってたんだけど、“天賦”って「てん“ぶ(bu)”じゃなくててん“ぷ(pu)”」なのね。

ずっと間違えて覚えてました(笑)