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聞く力―心をひらく35のヒント (文春新書)/阿川 佐和子



あんまりベストセラーの本は読みませんが、去年は何冊か読んだ中の一冊です。

人の話を聞く技術は、相槌をつくタイミングとか深さ、それからオウム返し質問や応酬話法など色々ありますが、最後は人柄でしょう。

この著者の阿川佐和子さんも、キャラがいいです。

天真爛漫でいて、きちんと内省的に自らの言動に対していつも自己評価を厳しくされていることが、この本の価値かなと思いました。

そういった性格に嫌味がなく、普遍的に伝わりやすい天性をもっておられるんでしょうね。

しかし、天性とかという言葉だけで片付けられては、この著書が150万部も売れた理由になりません。

阿川佐和子のネームバリューだけでも、難しかったのではないだろうか。

なぜですかね。

恐らく、この著書のタイトル。ずばり「聞く力」ではないでしょうか。

聞くことは受け身なことのように思われがちですが、実は、会話の主導を握るのは、聞き手であるのです。

よく、人見知りで、コミニケーション能力に自信の無い方が、喋り方について学ぼうとしたりします。

例えば、ビジネスでよく使われる丁寧語や自分をよく思わせる言い方。

喋りが達者な方は、確かに交友関係も賑やかな印象があります。

しかしですね、僕も仕事上、色んなお客さんとお話する機会が多いですが、喋りは下手でも、相手を如何に喋らせて、そのお話を如何に聞き取れるかが一番大切だと思うんです。

そんな実感もあり、このタイトル「聞く力」を買ってしまったのは、僕だけじゃなく、聞くことの大切さ、もしくは、一方的に喋ることより、聞く方が、大切で人間関係への期待も込めて買われた方が大方だったのでは無いでしょうか。

しかも、この殺伐とした時代背景の中、携帯電話やネットでのやり取りから、もっと人間味のある関係への希求もあったかもしれません。

著書の文章も大変読みやすく、コミカルですし、立ち読みしてても、「この続き家でゆっくり読みたい」と思わせてくれます。

まさにこれは、読ませる力でしょうか。

これは阿川さんが、気取ったお話を書かれてないんですね。文章が上から目線じゃないんです。

冒頭から、御自身の失敗談なんかを豊富に織り交ぜながら、専門的な聞く技術などを説明し、それを実践していった報告などコミカルに、ときに、真摯に書かれていました。

さすが、メディアで活躍されるだけのことはあるなと思いました。

つまり、御自身のプレゼン、売込みが、上手というか、つぼを知り尽くしてるんでしょうね。

如何に、相手に関心を持ってもらい、好意を抱いてもらうか。

その行為が嫌味じゃない。

いや、ひょっとしたら、物凄い嫉妬もされてこられたでしょう。

こういったことをサラッとできる女性は敵を作りやすいでしょうし。

しかし、もちろん阿川さん自身、著者で書かれてるように、ご苦労も多かったようです。

さて、この著書を読んでから、僕自身、少しでも聞く力が向上したかは分かりませんが、以前より、人との会話中、如何に相手に話させようかと考えるようになりました。

なかなか、自分の喋りたいことを我慢して、相手の話を聴くのは、難しいものですが、それでも辛抱強く相手の話を聴いていくと、相手が段々と素直になってくるんですね。

で、相手の話がひと段落つくと、こっちのことを聞きたくなってくるんです。

そんな感じがします。

で、相手はご機嫌になっています。

これは、皆さん、やはり、人に、話を聴いてもらえると、嬉しいんですね。

一方的に話すより、相槌をうたれながら、共感されると、その聞いてくれた相手に好意を抱きやすくなるのです。

これですね、占い屋のやり口ですわ。

うははははは。

まあ、でも、そんなもんですよ。

阿川さんは、きっと、占い屋にもなれますよ。