死亡事故は、今回のようにタイトルマッチとか、ランク入りをかけた大一番とかが圧倒的に多い。

…もちろん例外もあるけど、大体そう。

そもそも、タイトルマッチなんて全体の試合数からすればごく僅かなのに、その方が数が多いことでも分かるだろう。

…選手はもちろん気合い十分だし、応援団の数も増えるし熱気も満々。

…そんな中で、試合内容も激戦やシーソーゲームになれば、止めることは難しい。

「まだやれるから」。

それでやらせてたら、だからやらせてたら、どうなるのか。

…。

分かってることだけど、言葉にするよ。

…。

ボクサーは、本当に文字通りに、死ぬまで戦い続けるんだ。

…。

…即死はしない。

その場で即死するのは聞いたことがない。

試合で脳内出血して、大体2週間くらいかな。

…それでも。

その致命傷を負うまで、もしくは負った後も、最後まで戦い続けるんだ。

…そりゃね、普通の人には出来ないことをやってるんだ、だから凄いんだ、だから期待するんだという言い分も分かるよ?

ストップ早くすれば、ボクシングもつまんなくはなるよ?

…けれども、それならば俺も問いたい。

…。

…人の命を犠牲にした娯楽が、あって良いのか??

…忘れないでほしいことは、ボクサーも1人の人間だということ。

人の命を犠牲にした娯楽なんて、あっていいはずがない。

…。

…タイトルかかってたり、接戦で熱戦で、止めるのは難しい。

けれどそれをやらなければ、ボクサー死ぬまで戦い続けるんだ。

それを止められるのは、セコンドとレフリーしかいないんだ。

責任持って選手の命を守らなければならないんだ。

…4回戦の試合だから、早めに止める、タイトルマッチで接戦だから、止めるのが難しい、遅くなる。

それじゃダメなんだ。

同じ基準で、一律止めなきゃいけないんだ。

…。

…もう20年以上前になるけど。

最後にKO負けした時。

「何で止めるんだよ!!まだまだやれるよ!!ふざけるな!!」と激昂した。

…率直な気持ちを言うなら、その場でレフリーぶん殴っちゃいたかった。笑

…家に帰って、冷静な目でビデオ見たら。

「…あ、これは、ストップですね」。と納得した。

レフリーは、俺の命を守ってくれたんだ。

あの時のレフリーさん、一瞬殺意が覚えて申し訳ありません。

…本人は、やれると思ってるんだ。てか実際に、やれるんだ。本当に。

でもそれを本人以外がプロの目で見て、止めなきゃいけないんだ。

…。

こっからはまた反論も出てくるだろうけど、さらに言うよ。

…。

…罰金しかないのでは?

…死亡事故起こしたら、捌いたレフリーとセコンド、それぞれ罰金50万円。

…酷いかな?

…でも、人の命預かって失敗して、50万円はむしろ安いと思うけど。

…でも、そしたら。

死亡事故は、確実に減るよ。

「責任持ってやってます」って言うんなら、それくらいは本当に責任持ってほしいよ。

…でね?

さらにもう一つ、人に嫌われること言います。

自分が人に好かれるかどうかよりも、俺は選手の命を守りたいから。

…ストップが遅くなる原因って、何か?

…タイトルマッチだ、大一番だ、もの凄い接戦だ。

それをストップさせ難くしてる根本は、何か。

…多数の人の、声。

「何で止めるんだよ!」「まだやれただろう!」という、声。

それが嫌だから、完全に勝負ありと明らかになるまで、レフリーはストップしにくい。

なのでつい、レフリーはギリギリまで試合を続行させてしまう。

そうせざるを得なくしているのは、一人一人の認識とその声なんだ。

まず我々傍観者が、「もうやれなくなるまでやらしてたら、本当に人は死ぬ。その前に本人以外が、断固止めなくてはならない」ということを、しっかりと認識しなくてはならない。

…セコンドは、誰かに文句言われるとかよりも、それまで二人三脚で頑張ってきて、目の前にある栄光を自ら捨てることの難しさか。

でもその決断する勇気は、断固遅れてはならない。

…。

直接知っている先輩がタイトルマッチのリングに上がる前、トレーナーに言ったそうだ。

「どんな状況になろうが、絶対にタオルは投げないで下さい」。

トレーナーは、約束を守った。

彼は、帰らぬ人となった。

本当にあった話。


試合後グローブタッチする両者。無事試合は終わったかのように見えた。…が…。



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