元暴走族特攻隊長で国語偏差値を25から86(代ゼミ全国総合模試)まで上げて大学入試を突破した(早大国文科だと自慢してるワタクシですら最高は82《同模試》なので、ワタクシより凄い)伝説の代ゼミ古文講師、吉野敬介氏の著書にあった。

「女にフラれた俺は、『もうこの世に生きてる意味はない』と思った。『死のう』と思って、『自殺のススメ』みたいな本を買った。そこには、『雪山でジッとしてると、だんだん身体が麻痺してポカポカと温かくなり眠くなってきて、気持ち良く死ねる』と書いてあった。『そりゃあいい』と雪山に行って、雪山の中に行き横になった。
…ところが、いざ雪の上に横になると、寒い。めちゃくちゃに寒い。
ポカポカどころじゃない。
めっちゃくちゃ寒い。
耐えられなくなり、ガタガタ震えながらクルマに戻りエアコンのヒーターをマックスにして温まった。
温まったところでよしもう一度とトライするが、やはりめちゃくちゃに寒い。
再びクルマに戻り、体を温める。
そんなことを何度も繰り返してるうち、いい加減アホらしくなってやめた」という話がある。

「そりゃそーだよなー!笑 雪山で暖かくなるわけねーし!笑」と思っていたが。

…暖かくはならないが、強烈に眠くなってきた。

寒いというより全身に染み渡った冷たさは,火傷の時氷水にしばらくつけておくと冷たいと感じなくなるが如く、全身の冷たさは麻痺してくる。

しかし、痛烈な眠さは謎だった。



気合で眠さを堪えつつ、先を走る。


あと、80キロ。

ホントに店もやってない。

山中ではろくに雨宿りする場所もない。

…あと60キロ。

雨に混ざり、霧も出てきた。

「霧の摩周湖」と言われる摩周湖近辺を走っていたのも、この時は気付かなかった。

…あと40キロ。

…近づくにつれて、進み方が遅くなっていくように感じる。

「光速度に近づくにつれ、時間の進み方は加速度的に遅くなる」などというアインシュタイン方程式が、ボケた頭をよぎる。

…強烈な眠気は続く。

…あと30キロ。

うお!!

鹿!!

突如飛び出してきたり、並走したりしてくる。

こんなの札幌〜小樽にはいない!

…鹿を見たことがあるような気はするけど、道に出てきたことはない。

動物だから左右見ない。

突如自分のペースで飛び出してくる。

久さんにも言われていたが、こりゃマジで要注意。

…この日、目的地到着までに計四匹の鹿と遭遇。

…全部シカトした。

…鹿だけに……いや!ダジャレではない!!

「シカトする」の語源はそもそも鹿なのだ。(花札の鹿がそっぽ向いてる様子から「鹿とする」→「シカトする」が産まれた)



20キロ。

もはやここで止まると言う選択肢はない。

10キロ。

…眠気を超えた気絶に近い誘惑に耐えつつ、もう進むしかない。

…5キロ

4キロ

3キロ

2キロ

1.5キロ

1.2キロ

1キロ

800

500

300


ゴオオオオオオオオオオオオオーーーール!!!

…。

意識は朦朧としてたが、とにかく身体が冷え切っていることだけは分かっていたので、すぐさま湯船へ。

風呂沸かしててくれて助かった。

…本当に助かったぁ〜。

…。

風呂入ったら、どっちかと言えば眠くなるじゃんか。

…逆に目が、みるみる覚めましたから!笑笑

全身麻痺状態から、正気を取り戻した感じ。


体温測る余裕なんてなかったが、おそらく33℃くらいにはなってたんじゃないか…。(31℃を下回ると死ぬ可能性があるそうだ)


…ちなみに、漢方医学の世界で、「冷えは蓄積する」と言われている。

…その意味がちょっと分かった。

身体温めても、それこそ風呂で汗かくまで温まっても、どこか身体の芯に寒さが残ってる。

体の違和感が取れて通常に戻るのに、3.4日かかった。


…今思い返してみても、人生でこんなに冷えたことはなかった…。〈終〉

ゴール後



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