ほとんどが食ってさえいけない日本の「プロ」ボクサー達。
日本チャンピオンとかになってようやくその時食ってはいけるようになっても、
引退後の保障は何もない。
周りに担がれるままにウッカリ勘違いして「イイ暮らし」なんて覚えちゃったら、
後が辛いだけだ。
俺は多少のお金が入ってきても、無駄遣いすることはなかった。
質素と言えば聞こえはいいが、ほぼビンボー学生のままの暮らしを続けていた。
自分の深い部分の満足が、外見や持ち物ではないと分かっていたのもある。
自分のプライドやブランドは、自分自身にある。
所有物によっては左右されない。
くだらないものに大切なお金を使うことはできない。
ただ、嫌だけど、いずれ引退する時はくる。
望みはしなかったけど、その後も人生は待っている。
そんな時に、惨めな気持ちになりたくない。
俺がお金欲しいのは、必要な時に必要なお金がなかったら嫌だからだ。
贅沢がしたいからじゃない。
お金入ってきても生活変えず無駄遣いしなければ、少しづつでも貯められるのさ。
けどそんなことはあんまり人に言うもんでもないし、言っても自慢にすらならないし
いいことない。
そもそも極貧が普通になったかなってだけだし。
だから特には言わなかったんだけど。
もちろん周りの近しい人は知ってた。
本当に俺の行く末を心配してくれてる人。親とかには伝えてた。
すごく仲良い人とか。
もの凄くお世話になった「その人」も、そんな一人だった。
すげーーー世話になった。
マジでありがたかった。
さすがにお金払おうと思ってこちらから申し出たが、断られた。
その人に対する感謝や敬意は、増した。
そういう人に、せめて俺が決めてることがある。
やってもらったこと、その感謝の気持ちを忘れないこと。
人の顔とか名前とか全然覚えられない俺だけど、そういう本当に世話になった人の
ことは忘れちゃいけない。
今、何も返すことはできないけれど。
石に刻んでも忘れないようにしよう。
・・・・・ある時。
「その人」に、どうしてもまとまったお金が必要なことを、言われた。
しかし「その人」には貯金も何もない。
「その人」の話自体はあやしげでも何でもないし、俺も納得のいく内容だった。
そして俺には、将来のためにと寝かせてるお金があった。
その人には、すごくお世話になった。そしてなってる。これからもなるだろう。
その人が今いなくなったら、正直ちょっと困る。
話してても気が合って、会うたびに何度も爆笑してた。
大好きな人間だ。
・・ただ。
この世に完璧な人はいない。
金と女にだらしがないのも、俺は知っていた。
酔っ払った勢いで、俺の女の胸をわしづかみにされたこともある。
酒癖悪いのも知っていたし、一度は言ったけどちゃんと謝ってたのでそれ以上は俺ももう言わず水に流した。
・・「お金貸して」とは言われていない。
ただ、まとまったお金がどうしても必要で、それがあればおそらく生活も
変わるだろうし必ず返すこともできることを、話の中で言われただけだ。
そしてその人は、俺が帝拳でチャンピオンになってお金入ってきたのも知っていた。
一旦そのことについて話し出すと、間に口を挟む余地もなかった。
ずっと話し続けた。
その間。
俺は悩んでいた。
下を向いたまま、じっと考えていた。
その人が話し終えた後、俺は言った。
(続く)
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日本チャンピオンとかになってようやくその時食ってはいけるようになっても、
引退後の保障は何もない。
周りに担がれるままにウッカリ勘違いして「イイ暮らし」なんて覚えちゃったら、
後が辛いだけだ。
俺は多少のお金が入ってきても、無駄遣いすることはなかった。
質素と言えば聞こえはいいが、ほぼビンボー学生のままの暮らしを続けていた。
自分の深い部分の満足が、外見や持ち物ではないと分かっていたのもある。
自分のプライドやブランドは、自分自身にある。
所有物によっては左右されない。
くだらないものに大切なお金を使うことはできない。
ただ、嫌だけど、いずれ引退する時はくる。
望みはしなかったけど、その後も人生は待っている。
そんな時に、惨めな気持ちになりたくない。
俺がお金欲しいのは、必要な時に必要なお金がなかったら嫌だからだ。
贅沢がしたいからじゃない。
お金入ってきても生活変えず無駄遣いしなければ、少しづつでも貯められるのさ。
けどそんなことはあんまり人に言うもんでもないし、言っても自慢にすらならないし
いいことない。
そもそも極貧が普通になったかなってだけだし。
だから特には言わなかったんだけど。
もちろん周りの近しい人は知ってた。
本当に俺の行く末を心配してくれてる人。親とかには伝えてた。
すごく仲良い人とか。
もの凄くお世話になった「その人」も、そんな一人だった。
すげーーー世話になった。
マジでありがたかった。
さすがにお金払おうと思ってこちらから申し出たが、断られた。
その人に対する感謝や敬意は、増した。
そういう人に、せめて俺が決めてることがある。
やってもらったこと、その感謝の気持ちを忘れないこと。
人の顔とか名前とか全然覚えられない俺だけど、そういう本当に世話になった人の
ことは忘れちゃいけない。
今、何も返すことはできないけれど。
石に刻んでも忘れないようにしよう。
・・・・・ある時。
「その人」に、どうしてもまとまったお金が必要なことを、言われた。
しかし「その人」には貯金も何もない。
「その人」の話自体はあやしげでも何でもないし、俺も納得のいく内容だった。
そして俺には、将来のためにと寝かせてるお金があった。
その人には、すごくお世話になった。そしてなってる。これからもなるだろう。
その人が今いなくなったら、正直ちょっと困る。
話してても気が合って、会うたびに何度も爆笑してた。
大好きな人間だ。
・・ただ。
この世に完璧な人はいない。
金と女にだらしがないのも、俺は知っていた。
酔っ払った勢いで、俺の女の胸をわしづかみにされたこともある。
酒癖悪いのも知っていたし、一度は言ったけどちゃんと謝ってたのでそれ以上は俺ももう言わず水に流した。
・・「お金貸して」とは言われていない。
ただ、まとまったお金がどうしても必要で、それがあればおそらく生活も
変わるだろうし必ず返すこともできることを、話の中で言われただけだ。
そしてその人は、俺が帝拳でチャンピオンになってお金入ってきたのも知っていた。
一旦そのことについて話し出すと、間に口を挟む余地もなかった。
ずっと話し続けた。
その間。
俺は悩んでいた。
下を向いたまま、じっと考えていた。
その人が話し終えた後、俺は言った。
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