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「あと一回負けたら、もうボクシングは終わりにしよう」

そう考えて、ボクシングをもう一度だけやろうと思ったのは、30歳の時だった。


それから二回、負けた。

いずれも敵地での世界タイトルマッチだった。


相手が無敗だろうが有名チャンピオンだろうが関係なかった。

千載一遇のチャンス。

持てる全てをかけて臨んだ世界タイトルマッチは、空を切った。

二回目の仮病(仮傷?)王者判定逃げは、特に悔しかった。

あれで終わることは、どうしてもできない。

「どうかもう一度やらせて下さい!!」

俺の直訴は、会長に届いた。

もう一度やれることになった。


もう一度、まずは国内・東洋タイトルからやり直しだ。


実感として知っている世界のレベルには届かない相手に、

文句なしの判定負け。


もう、世界は絶対に無理だ。


諦めはついた。


ボクサー佐々木基樹は、これで終わり。


ボクシングコミッションで決められているボクサーの定年である37歳には

達していたが、東洋チャンピオン特例でリングに上がれていた。


もう、それ以上やりたいとは思わなかった。

悔しい気持ちはもちろんある。

けれど、俺は十分闘い続けた。

やめ時は誤っちゃいけない。

やってる最中には思いもしなかったが、気が付けばデビューから

17年の歳月が流れていた。

あっという間だった。


現役中。

・・・あえて、振り返らないようにしてた。

振り返って、「よくやったなぁ」なんて思ったら、

それは同時に終了を意味すると感じてたから。

その瞬間訪れる自己満足と長年に亘(わた)った疲労は、

俺をもう二度と立ち上がらせてはくれまい。


だからあえて前だけを向いて、走り続けてきた。


都内で開かれた引退パーティー。

10カウントのゴングを聞いた。

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ボクサー佐々木基樹は、そこで全てを終えた。


旅に出た。

かねてより決めていた、世界一周旅行。


・・・・・・・・・・。

試合後に短期で出る旅が、いつも楽しみだった。

それを励みに試合前の過酷な追い込みにも耐えられた。

10日間とか2週間。

楽しかった。

・・けどいつも、短いと感じていた。


・・いつか、引退したら。

思う存分、旅をしよう。

そうだ世界一周してしまおう!


それは、長い現役生活を終えた後の、長い旅だった。

長い闘いに対する、人生の休暇だった。

人生の、リセットボタン。

同時にそれは、生きがいをなくすと分かっている

自分への誤魔化しでもあった。


旅をしていれば、また前を向くだろう。

何か新しいものが見つかるかもしれない。

いや、見つけなきゃいけない。

第一毎日が楽しくて仕方がなくなるはずだ。

きつい練習はなしで、楽しい旅だけしてるんだから。



・・・・・しかし。

退屈するには、数週間もあれば十分だった。

終わっても、次に何もない旅。

ただの、旅。

その空しさ。虚無感。



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旅が楽しいのは、またボクシングを頑張るからだ。


俺が生きてきたのは、なんのためか。

旅をするためじゃなかった。

ボクシングをするためだった。


旅すらボクシングのためにしていたことを、俺自身この時

初めて気付いた。


・・けれど。

仕方がない。

俺はもう引退したんだ。

他に何か生きがいを見つけるしかない。


まぁ、引退したボクサーの多くが通る道だろう。


ロードワークは、ちょいちょい続けてた。

頑張って続けてたわけではなく、そうしないとあり余るエネルギーが

ストレスになるからだ。

あれほどつまらなかったロードワークが、やめられない

ものになっていようとは。


帰国。

現世界ランカーの近藤と、スパーリング。

・・俺に、以前と何もそん色はない。

普通に動ける。


そりゃまぁ、現役時よりは落ちてるんだろうけど。

動けるなぁ・・・。

動けちゃうなぁ・・・・。


一度乗れるようになった自転車は、何年も乗ってなくてもすぐに乗れる。

身体がその感覚を忘れない。

それと同じ感じ。

三種類に分けられる記憶の中の、手続き記憶という。

足掛け20年以上やってきたボクシングは、もはや身体に

沁(し)み付いて離れなくなっていた。


・・あぁ、これも引退したボクサーの通る道なんだな・・・。


四月三十日。

日本ライト級タイトル決定戦。

興味はない、というか持ってはいけない、自分とは関係はないけど、

やはり気になった。



凡戦だった。


凡戦だった。


・・・・・・・・・・・・・・。


・・・・・・・・・・・・・・?


・・・・・・・・・・・・・・!


ふと、気付いた。

気付いてしまった。


・・これなら俺、今やっても勝てるんじゃないか・・??


・・・・・・・・・・・・・・・。


・・ピークは過ぎた。それは認める。

自分が世界のレベルに達しなかったことは、分かった。


・・・・しかし。


まだ、国内なら、いけるんじゃないか?


・・・・けど。


今さら国内?


・・・・でも。


もう一度、あのリングに上がれるなら。


・・・いや、あれならたぶん俺の方が強いんじゃないか。

・・・もちろん、今でも。


・・・ウェルター、スーパーライトと、二階級は東洋・国内と獲った。

そうだ最後取り残したのは。


今でもスパーリングしてそこそこ動けてる。

二か月くらい本格的に練習すれば、すぐに戻るはずだ。


・・・・いや、でも・・・・・。


よくありがちな、「恥さらし復帰」になるだけなんじゃないのか?

数から言えば、そっちの方がはるかに多いよな?


・・・・・・・・・・・・・・。


一応、ルールブックを確認。

「国内チャンピオン以上を獲得したボクサーは、最後の試合より

三年以内に限り年齢制限が適用されない」


引退して、ちょうど二年。



・・・・・・・・・・・・・・。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。


・・・人が人生を振り返って一番後悔するのは、

「やらなかった後悔」だと言う。


精一杯やるだけやってできなかったものには、

後悔は残らないんだろう。


・・・・・・・・・・・。


高校生の頃、初めてボクシングの世界タイトルマッチを観に行って

目の当たりにした、光り輝く一瞬。

俺の人生にも、そんな瞬間が出来るなら。


・・・・・・・・・・・。


やれるんじゃないか?

俺は、まだやれるんじゃないか?


・・・・・・・・・・・・・・・・・。


けど、本当にやれるのか?


失敗例は山ほどある。

失敗例しかない位じゃないか?


失敗したら、どうする?


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。


やるだけ、やってみようか?

やってみて、やっぱりダメだと分かったら、その時点でやめればいいじゃんか。


とにかくボクシングがしたい、というわけではない。

それでやると、周りにも迷惑をかけるし、自分にもいいことない。


やれるから、やる。

やれるなら、やる。

勝てるから、やる。

やれる範囲で、やる。


世界へ届かないのは分かった。

日本タイトル一直線。

それのみ。

やり残したことをやり終えて、終わりにしよう。

・・・だったら、どうだ?


もし、少し動いてみて、やはり思うように動けなかったら。

その時は、自分からやめよう。

会長やマネージャーが最後まで認めてくれなかった場合も、もちろんダメだ。

けれどその前にも後にも、自分自身で納得いかなかったら、自分でやめよう。


それだったら悪くないんじゃないか?



・・・・・・・・・・・・・・・ドクン。


・・・・・・・・・・・・ドクン!


・・・・・・・ドクン!!



心臓の鼓動が高まってくるのが、自分でも分かった。


・・・・でも、本当に、やってみるのか?



やるのかい?

やらないのかい?

どうするんだい?



・・・・・・・・・・・。


「人が自分の人生を振り返って一番多く後悔している事実は、『やらなかった後悔』である」。



・・・・・・・・・・・・・・・・・。


ピーター・ドラッカーは言った。

「自らの強みに集中せよ」。


俺がこれから何か他のことやって、日本一・東洋一になれるものなんてあるか?


・・・・・・・・・・・・・・・・・。


モハメド・アリは言った。




「臆病なヤツに何ができる?」


・・・・・・・・・・・・・・・・・。



この夜俺は、復帰を、・・正確に言うなら復帰を目指して

本格的に動くことを、決めた。





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