ベネズエラは国が無茶苦茶である。

ベネズエラの通貨ボリーバルなんて、ベネズエラ人でも欲しがらない。

USドルの方が喜ばれる。

自分の国のお金より他の国のお金の方が信頼置けるとか、そこからまずおかしいだろ。

信頼も価値も全然ないお金なのに、国が無理矢理レートを定めている。

1ドル=6.3ボリーバルだったかな。

けど実際、ボリーバルにそんな価値は全くない。

だから国が無理矢理言い張ってる公定レートと実際の実勢レートの差は広がるばかり。

国は1ドル=6.3ボリーバルと言い張っているが、実際には誰もその値段じゃ取引しない。

2014/10現在で1ドル=85~90ボリーバル程度である。

闇レートとも言うが、実勢レートという方が正しいと思う。

ちなみにこの実勢レートも、数年前のガイドブックの、何と十倍以上値上がりしている。

数年前は実勢レートで$1=8ボリーバル程度だったのが、今やその約十倍だ。

…インフレの話はまた次にして。

 
そんな国で、旅人が最も警戒している悪党は誰か。

  
それは。

ゲリラでも強盗でもなく。

警察と軍隊である。

日本は国家権力が弱いので、なんだ警察かと思うかもしれないが。

海外では一般的に、国によっては特に、国家権力が強い。

中国でなんか警官が怒りに任せて一般市民をバチバチぶん殴ってるの見たことあるからね。

んで。

国が無茶苦茶で、インフレも止まらず、警官が悪い。

当然、治安も悪い。

首都カラカスなんて、行く旅人の方が珍しいくらい。

殺人発生件数が、10万人中53.7件。世界第二位。ちなみに一位はホンジュラス。
エンジェルフォール、ロライマ、ほぼ手付かずのカリブ海の島々等、旅人にとってものすごく魅力的な国であるにも関わらず、観光客は減っている。
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その警察官および軍隊の何に注意しなきゃいけないかと言うと。

現金の巻き上げ。

それも旅人から、自国通貨ボリーバルでなくUSドルを取り上げる。

荷物検査と称して荷物の隅々まで強制的に調べ上げ、現金を見つけると、「多額のUSドルの持ち込みは禁止されている(ウソ)」とか、「一枚ニセ札の100ドル紙幣があったので、それは没収だ(もちろんウソ)」などと言って、金品を巻き上げる。

荷物チェックが全て終わった後、気が付いたらiPhoneがなくなってた、という話もある。

 
だから、最初から現金を見せてはいけない。

かと言って実勢レートで両替出来るのは現金のみ。

銀行で下ろそうとしたりカードキャッシングしようとすると、実際の十分の一以下のお金しか手にできない。

なので、旅人は皆現金を隠し持って行かなきゃならない。

 
 カードやパスポートは現金化が難しいので、やはり警官に狙われるのはUSドルの現金。

皆、逆に、貴重品入れから外してる。

トイレットペーパーの芯の中とか、ベルトの中に細工があって現金隠せるようになってるマネーベルトとか、サランラップでグルグル巻にしてシャンプーの中に入れてたって人もいた。

…なんで俺等何も悪いことしてない旅人が、密輸入みたいな真似しなきゃならんのだ。苦笑

  
で、俺の場合。

最初入る時危ないと言うので、バックパックの背中の芯の中に、現金を突っ込んでおいた。

まぁ、幸いなんの検査もなく国境の町までは入れたわけだが。

…しかし、現金を確認すると。

芯の上から棒を差し込んでいたので、一万円札が一枚、破れてしまっていた。

日本の銀行なら変えてくれるが、海外では無理だろう。

この破れた一万円札は、今後ずっと日本まで持ち歩かねばならない。

 
バックパックの芯は、破れたし入れるのも取り出すのも大変だ。

なので、iPadとケースとの隙間とか、靴の中敷の下とか。

マジで密輸入みたいな真似しなきゃならなかった。

 
けど、それはどうも長距離バスの途中みたいだ。

さすがにエンジェルフォールやロライマの観光地ではやらない。

普通の観光客も減ってしまうと。

なるほど。

 
で、長距離移動。

とはいえ、まだ観光地の側。

面倒なのもあり、現金は腰巻に入れて置いた。

夜中でも、何度もチェック。

全くの無駄だ。

ベネズエラはホントに無駄な場所に余計な人員やお金をつぎ込んでいる。

何度か、夜中に叩き起こされた時。

またかと思ってたら。

眉毛の太い、目つきの悪い軍人。

俺の席まで来て、パスポートを確認した後。

「おまえだけ、ちょっと来い」と。

他にも外国人は何人もいたんだけど。

深夜三時の田舎道、なぜか俺だけ一人、バスを降ろされることになった。

〈続く〉