(続き)
「こりゃー高速道路だ!」と喜ぶフランス人。

明らかに前までと道が違う。

「こっちだろ」ってさっき俺が言った方に行ってればと一瞬思うが、
そんなに大きくは外れてないはずだ。

きっと新しい道がすでにここまでできてるんだろう。


・・・が。

違う。

明らかに、違う。

道の形が少し変わるのはあり得るとして、木の枝のトンネルくぐるとか、そこまで
地形の変化があるわけが、ない。

そして相当、降りてきた。


だんだんと分かっていたこと。


俺等は、富士山で降り口を間違えていた。

吉田口から来たのに、須走口に下りて来てしまっていた。

$元ボクサー日記

完全に暗かった以外は、今までと同じ道を降りてきたはずだ。

ただ途中に何回か迷って適当に行ってた場所もあった。


しかし・・。

とりあえず、行ってみるしかない。

<バス乗り場まで30分>の看板。

行った。

行くしかなかった。


バス乗り場。

誰もいない。

人っ子一人いない。

当然、バスも最終が出た後。

これが一番ポピュラーな吉田口だったら、人もいただろうし、バスもあっただろう。

が、本当に誰もいない。


・・・・・・・・・ふもとまで、そこから2~30キロ。

もしくはもう一度頂上もしくは間違えたところまで登り、降るか。

どちらの体力もなかった。

五合目は頂上よりはかなりマシだが、やはり冷える。

とりあえずは、何か方法がないか辺りを探し、三人で話し合う。


周りに建物はあったが、中に誰も人はいない。


プチ遭難。(苦笑)


・・・まぁ、ケータイが繋がるので死ぬことはないが。

こんなんで110番するわけにもいかないし。


仕方ない。

こんな時はインドまで連れてってやった俺の人徳を活かす時だ!

オカン、いや、母上様に電話!


正直富士山まで車出せば多少金もかかる。

うちの燃費悪いワゴン車で行けば、高速代ガス代富士山有料道路で、
諭吉君はすぐに飛ぶ。

定職もないが年金もまだ出ない親には出させられない。

もちろんそれは持つし、若干のお気持ちは出すよと。

夜の九時にまだやりかけの作業を家でやってる最中だったからね。


しかし、そんなわけで助かった!

よっしゃー!!


・・・が。

寒い。

どうにも寒い。

暖を取れる場所もないし、せめて小屋のような場所でもあれば良かったが、それもない。

仕方ない、歩いた。


海外で色んな体験してきた佐々木が言う、こんな時のサバイバル術。


ずばり、ヒッチハイク。笑


それも、「ヘーイ!」って親指立てたりなんかしてもダメ。


「ちょ、ちょっと待って下さい!すみません、ワタクシの話をマジでちょっと
聞いて下さい!!」
って必死さをジェスチャーで伝える。

念力で目の前の見えない壁を押さえ、お代官様おねげーしますという態度を伝える!

・・いや、書いてるとふざけてるみたいだけど、マジだから!


下山方向に歩くこと10分くらい、最初の一台が止まってくれた。

が、カップルでデートの、二人乗り用乗用車。

我々が乗れるスペースはない。

最終的にタクシー呼べというアドバイス。


二台目。

明らかにブレーキングして減速はしてくれてるんだが、止まってはくれない。

「なんだろうこいつら?」

みたいな。

スーーっと通り過ぎてしまう。


と思ったら!

止まった!

向こうの方で!

おおおおーーーーい!

無人島で漂流してる人が船を見つけたらこんな気分だったろう。

おおおおーーーーーいい!!!

が。

車、力強く発進!


・・・・・・・・・・。

こっちは三人もいるしな。

ガイジンと、目つきの悪い人(もちろん俺ではない)もいるし。

身の安全考えたら仕方ないか。


また歩く。


と、その時!


・・・・もうだいぶ長くなってきたが、ここまで読んでる人は最後までいくはず!
読んでない人はとっくに飛ばしてるはず!なので書き切る!


三台目!

止まってくれた!


話も聞いてくれる!

横浜から来た、タクシーの運転手ご夫婦と赤ちゃん!

明るい方達で、よっしゃ富士山でも散歩に行くかと車出したらしい!

なので五合目付き合ってくれるなら下り乗せてってあげるよと!

全然行きます!

乗せてってくれた~~~!!

よっしゃー!!


再び今はもはや見たくもない須走口五合目。

ふと戻って来て見ると、夜景の綺麗なこと!星々の輝いている数!

素晴らしい景色だったが、さっきの俺達はそれどころじゃなかった。


安心した気分で見る景色は、美しかった。


そういえば気になっていたことを、フランス人に言った。

ガス代高速代をシェアしてくれないかと言うといいよと言ったが、
金額を言うと高すぎる嫌だと言い出し。

こんなとこまで来てお金のことでもめたくないので、分かった分かった
いくらなら払うんだと聞き、それも了承したんだけど、後からまたやっぱ
やだと言い出して。

バックパッカーは人の親切に甘えることに慣れちゃうんだよな。

俺も経験あるので分かるんだけど。

もめるのも嫌なのであまり言わなかったが、結局最初了承した額払った。


ファミレス到着後、ほどなくオカン、いや、母上様到着。


国立を過ぎるのはすでに深夜1時頃。

先に母上様を実家に降ろして、都内まで残る二人を送って行った。

帰りはかなり眠かった。

眠すぎて頭痛すらしてきた。

さすがに危ないので少し車を止めて仮眠したりして。

俺が家に帰ったのは明け方四時過ぎ。


・・ちなみに俺は明日にも富士山五合目吉田口に置きっぱなしになっているバイクを一人
取りに行かなくてはならない。


それにしても。


いやーーーーー、大変だった。




挑戦なんて、失敗したらめんどくさいだけだ。

大変なものなら大変なものほど、その時間・労力の損失は大きい。

挑戦なんてもうまっぴらごめんだ。

もうコリゴリだ。

もう嫌だ。

二度とやらんぞ!


・・・って、ホントに思うしホントにそう感じるんだけど。


俺はまた、挑戦するんだろうな。

富士山とは限らないけど。

己の力を試すために。

自分が何をやれるのか、自分自身が楽しみにしてるから。


俺は、挑戦することが、好きなんだ。