(昨日の続き)

ガックリと富士山山頂。

そこに、一人のフランス人がいた。

一般的なフランス人は、英語あんまり話さない。

日本人よりは少し話すくらい。

が、彼は英語をよく喋る。

バックパッカーならでは。

辺りはすでに薄暗くなってきていた。

一緒に来たもう一人は大丈夫か。

山頂は、以前にもまして寒い。

全く人の気配はない。

分かってはいたが、山小屋も全てしまっている。

登って来る途中、違うヨーロッパ人に「もう今から上がるべきじゃない。降りるべきだ」なんて止められて、ノープロブレム問題ないよって上がってきたけど。

まず問題はもう一人の相棒とどうやって落ち合うか。

日は落ち始め、かなり冷え込んできている。

「今日はここで眠って、朝日の出を見てから帰ろうと思うんだ」

とフランス人。

「悪いことは言わない、やめとけ。ガチで死ぬぞ。生き死にの問題だ」

俺が止めなきゃ彼はやるつもりだった。

俺もだけど、バックパッカーは無茶をする人種だ。


とその時!

相棒現れる!

俺が遅かったとはいえ、二時間四十分だ。

遅れることたったの約十分。

知ってる範囲で一番頑丈なやつ選んどいてよかった!


が、

どうしようか。

とりあえず、急いで下山。

が、すぐに暗くなり始め、やがて暗闇に。

フランス人、ライト持参!

トレビアーン!

電柱なんてもちろんない。

月も出てなかった。

彼のライトの明かりだけが頼りだった。

…なるべく後ろから照らしてくれと言ってもグイグイ前に出てしまうが、文句は言えない。

なるべく前にいるようにし続けた。

途中、少ないながらもいくつか別れ道。

そんなに分かり難かった記憶はない。

道のある方でいった。

もう一応閉山なのか。

ロープのあるところもあったが、くぐって行かなきゃ帰れない。

今思えば途中何箇所かあったが。

やはりロープ張っておるところがあり、違う道に逸れた。

明らかに違う道だった。

富士山はもう山道を工事始めてて、工事車両が時々通る。

山道も変わっているのだろう。

砂利がたくさん敷いてある道を通ると、「こりゃ~高速道路だ!」と喜ぶフランス人。


……それから、あんなことになろうとは…〈続く〉


$元ボクサー日記
五合目出発前は、こんなはずじゃなかった・・。