カーン


強さへの強烈な憧れ。



全ての始まりは、その単純な願望だった。


カーン


初めてのスパー。

全然弱そうに見えた同い年のテルちゃんに、ボコボコにやられる。


ボクシングって、スゲエ!


高三の夏。

アマチュアでデビュー戦は、人生初の挫折。

二年半の回り道。


カーン


大学。

ようやくプロライセンス。


新人王は東西対決で破れる。

東日本、全日本と、スポーツ新聞にデカデカ取り上げられる驚きと快感。


翌年、初八回戦でランク入り。

A級トーナメントも制した。


カーン


日本タイトル初挑戦は、納得のいかない判定負け。


が、翌年、当時誰も勝てないと思っていた湯場に勝ち、初タイトル戴冠!


この俺が、日本一!


この俺が、日本一!


「この勝利は、まぐれではない。ボクシングの歴史がいずれ証明することになる」と嘯(うそぶ)いた本人が、実は試合前一番勝てるわけないと思ってた。(笑)


人生で一番浮かれた瞬間。


カーン!


有頂天になっていた初防衛戦、軽~くやっつけるはずが、KO負け。


天国からの、地獄。


キツかった。


ちなみに十八年間のプロボクサー生活で、怪我による全身麻酔手術は、計四回。右膝、左手中指骨、右肘、鼻。


カーン


再び日本タイトル。木村にやや納得のいかない判定負け。


迎えた三十路。


二戦一敗一分の年。

引退しようか迷うも、「あと一度だけ」と復帰。


カーン


移籍後、東洋太平洋ウェルター級タイトル獲得。同じ相手に防衛も成功。



そしてついに。


WBA世界ウェルター級タイトルマッチ決定!



己の全てをかけた一世一代の勝負は、実らず。


カーン


続行。本来の階級に戻し、再び東洋太平洋タイトル獲得。





そして再び悲願の世界戦決定!


起死回生の最後の攻撃!

…の途中に、止められ、不完全燃焼に終わる。


カーン


まずは国内からやり直し。

が、敗れ、ついにグローブを吊るす。


カーン

photo:01