出来のの良くなかった試合は、正直振り返りたかない。

が、やはり振り返ろう。


コンディション。

悪くなかった。

むしろ取り立てて悪いところがなかったというのは、かなり良かった部類に入る。


1R目。

昨日も書いたが、俺は初回から倒す気でいた。

それが打ち気に逸ってしまったのかもしれないが・・。

ビデオはまだ見てないが、覚えてる。

左ジャブの引き際を狙った右。

相手の腰が砕けた。

俺にしがみ付きながら、ズルズルとリングに手をついた。

ダウンだ。

裁定はスリップだったが、そんなの全くどうでも良かった。

なぜなら、絶対に倒し切るから。

が、意外と足にはきてなかった。

だからそこまでチャンスとも思えなかった。

・・・チャンスだよ、あん時いっとけ俺・・・・!!


前回の試合でKOを焦り、力みすぎた。

力まないようにだけは気をつけてた。

だからそれはなかったとは思うが、しかし・・・・。


俺の中で、3R以内には絶対にけりをつけようと思ってた。

・・・実は、会長にもそう宣言しちゃってたよ・・・。

だから3R、ついショルダーガードやり始めて、いやいやまだそんなことやってる場合
じゃない、一刻も早く倒しに行けと自分に言い聞かせてすぐに攻撃に移ったのを覚えている。


4R。

相手はバンバンパワーパンチを振るってくる。

「相手もう疲れてるよ!肩で息してるぞ!」

本当か!?

ならもっと打たすか。

もうちょい打たせればグロッキーになるってことだろ?


ある程度のパワーパンチだが、見切れないほどじゃない。

ブロックし切れる。

打たせておいた。

例の死んだフリ作戦だ。


・・・・・・。



・・・・・・・・・・・・。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。



まだかよ!


まだ疲れないか!?



ぇえーーい、もうやってられねえ!反撃だ!


堅く閉ざしたガードを開き、攻撃に出た。


「おぉおおーーーー!」という観客のどよめきが耳に入った。



・・・おいおい、皆そんなヤバいと思ってたのかよ!?



・・・繊大さんがタオル持って投げようか投げまいか迷ってた、あと数秒反撃するのが遅
かったら投げてた、というのは後で聞いて知った話だ。


俺からすれば相手を疲れさせてて、それがいつまでも疲れてこなかっただけの話だけど。

まともに喰らったパンチはないしね。

でも下手すればストップされてても文句は言えないと。

・・あんまり得策じゃないようだ。

そういや昔ジミンさんにもやめろやめろ言われてた。


しかし。

サンティリャンだったら二回くらいスタミナ使い果たしてた所だ。

でも今回の相手はピンピンしてた。

そのパワーパンチが結果として最終ラウンドまで死ななかった。

スピードやテクニックはそれほどでもなかったが、スタミナは相当のものだったな。

何度も地域タイトルを経てきているだけのことはあった。


4R、あそこで反撃に移らなかったら、まだまだずっと打ち続けてただろう。

そしたらレフェリーストップやタオル投入が本当にあったかもしれない。

ある意味危ないところだった。


5回、6回。

もちろん倒しにいった。でもできなかった。


6回終了時。

「次のラウンド休んでいいですか?」

聞いたの覚えてる。

ここまできちゃったら7回でも8回でも変わらない。

確実に、絶対に、試合中に倒すことが先決だ。

「いいぞ。ただしガードだけじゃなくてな」

「攻めながら休みます」

俺、そう言った。

7回。

休んだ。

攻めながら。

攻勢は取ってるしダメージも与えてはいるけど、あくまで真打は最終ラウンド。


そんな感じでいってたら、かえって肩の力が抜けたのか、中途半端にいいのが入って、
一瞬迷うがやっぱりチャンスだと中途半端につめにいったりして。


絶対仕留めたかった最終ラウンド。

上手くいかなかった。


相手が、逃げまくってたりしてたわけじゃない。

むしろスピードの違いを分かってか、前に出てきてた。

逆に俺の方が安全運転に走ってたかもしれない。


ちゃんと向かってくるフィリピン9位を、倒せなかった。


勝つのは当たり前。目標にしてない。

倒しきれなかった。

正式なダウン一つも奪えなかった。


この情けない結果を、ちゃんと正面から受け止めよう。



ただ、その実力が俺の全てだとは思わないでほしい。


俺は、格上には強いからさ。