スパー。尾川。

強くなってるねぇ~。

「相手が尾川だと真剣にやる」と繊大さんにも言われた。

そりゃそーだ。

本気でやらなきゃこっちが遊ばれちゃうよ。


日本拳法出身がいい方向に活かされると、かなりやりにくい。

日本人ボクサーにはあんまりいない形だ。

それもまたよし。


充実したスパーリングができた。


体重も順調に減ってる。

この分なら大丈夫。


そーいや毎回思う不思議。

減量にまつわる不思議なことはたくさんあるけれど、その一つ。


あくまでも俺の場合だけど。


減量が終わった、さぁー食えるぞ!

・・・で食っても、それほどは美味しくない。

そりゃー美味いけどさ。

「あれ?こんなもんか・・・?」ってくらい。

腹いっぱい食えるなら何でもするぞぐらいの気持ちだったのに。

いざ腹いっぱいになっても、想像してたほどの満足感はない。


じゃ逆に、何が美味いのかと。

それは例えば、「うおー腹減った~!マジで減ったー!・・・えぇーい、予定外だけど、
ピーナッツチョコを一つだけ食べちゃえ!」

って食っちゃった一粒のチョコとか。

五臓六腑(ごぞうろっぷ)に染み渡る、なんて言い方があるけれど、まさにそれ。

美味い。

美味過ぎる程に、美味い!

その一粒が、黄金のような輝きを持った美味しさに変わる。

ただのピーナッツチョコに、「こんなに美味いものがこの世にあるのかぁ!?」って感動できる。

強烈に、猛烈に、最強に、美味い!

これを腹いっぱい食えるなら、死んでもいいんじゃないかってくらい、美味い。

・・・でもこれも、減量終了後、いくら食ってもいい状況で食っても、それほどは感動しない。

まして腹いっぱいチョコばっか食っても、全然死んでよくない。(笑)



・・・説明の仕方を考え付いた。

例えば、猛烈に喉が渇いたとしよう。

ものすげーーー喉が渇いた時の、最初の一口目の水。

最高に美味いはずだ。

でもその渇きが九割方癒えた後の、最後の一割の水。

最初の一割に比べ、それほどでもないはずだ。

むしろいつもと違ってたっぷり水分含んだ身体がチャポンチャポンしてる感じで。

10分の9満たされて残りの1を満たすのと、0だったものが1満たされるの違い。


こればっかりはやってみなけりゃ分からない。

いつも言うけど、塩の味は舐めた者にしか分からない。


将来、どんなに世界中探して美味いものを食べたとしても。

ボクサーである今、心から渇望して食べた一粒のチョコレートに勝るものは、一生得られないだろう。

そう考えたら減量も、いいことあるじゃないか。