まとまなボクシングは、本当に強い。

どれだけまともじゃないボクシングに引きずり込むか。

まずはリズムを崩すことに成功した。

一度リズムに乗せさせたら、手がつけられないからね。


よし、よし!

ソトは、怪物じゃない。

これなら!



繊大さんは後からビデオ見て、「おおおーー!?」って叫んでたな。

ソトが足使って回り込んだ瞬間、俺もスッと足使ってバックステップで避けて。

俺、以前は足なんて全然使えなかったからね。


連打いった時、足とスウェイで避けられたのも覚えてる。

意外と接近戦が多い割りに、距離遠いなと。

もう一歩踏み込まなきゃダメだなと。


1R終了。

「(やってみて相手)どうだ?」と繊大さん。

「これならいけます!!」

これ以上なく興奮して断言したのを覚えている。



これならいける。

それが1R終わっての率直な感想。

そりゃー強いよ?

でも、いける。

俺は今まで色んな所で色んなヤツとやってきた。

一番強かったのは、アメリカでやったエドウィン・バレロ。

やった時に実力差があったのは、タイでやったシリモンコンかな。

バレロは、全ての試合・スパーを通じて、唯一「怖い」と感じた。

「殺される」って恐怖があった。

そう感じたのは他にない。

・・・今考えたら、初回移動疲れもあったままアメリカついた当初にやったのが良くなかったが・・。

ただ、バレロ対パッキャオは見たかった。

今となっては永遠にかなわぬ幻のカードになってしまったが・・。


シリモンコンも当時まだ俺が日本ランカーで、かつアウェイという要素はあったにせよ、強かった。

触れることができなかったからね。

何もやらせてもらえなかった。

そういや彼は、刑務所から出てきたのかな・・。クスリの売買で捕まって以来分からないけど。


当時と今の自分の実力が違うにせよ、彼等のような「怪物」ではない。

やってやれないことはない。

手の届かないところにいない。

そう、よく人に言われることだが、俺は帝拳に来て強くなった。

一年半前のセンチェンコとやった時よりもさらにバランスや距離感が全く違う。

自分でも思うが、俺は晩成型で、全然天才型の人間じゃない。

見た目や入場は派手にしてるよ?

ただその実、ボクサーとしての実力は、えっちらおっちら地味に努力に努力を重ねた結果だ。

今回獲ったら日本人最高齢だったみたいだけど、俺からすればただ単にここまで来るのに
人より時間がかかってしまっただけ。それでも諦めずにただひたすらやってきただけ。

パーっと世界レベルまでいき、パーっと花を咲かせるなり何なりして引退する。

それもいいよ。

ただ、凡人の俺が、本気で世界の頂上まで登りつめようと思ったら、そうはいかなかったってだけ。


そんな俺が。

目の前の敵。

おそらく俺をなめきってた敵。

強い。強いよ。

でも不可能じゃない。

やれる。

これならいける。

やってやろう。

何が何でも。