コスメル入りすると、町の人がもう皆知ってる。

メキシコのボクシング熱はすごい。

俺は敵のはずなんだけど、街行く人の俺を見る眼差しに、率直なリスペクトを感じる。

道を歩いていると、側を通った車がキッと止まり、中から人が降りてきて、
息子と一緒に写真を撮ってくれないかと言われたりする。


油断してると人が集まって来ちゃう。


ドネツクでの世界戦の時もそうだったが、地方でイベントがあると、そのイベントに
町中の人が浮かれてる雰囲気。

前回も書いたが、今回、プロモーターが新聞社のオーナー(?)だったこともあって、連日
地元の新聞の表紙に俺とソトの世界戦広告が載っている。

「対戦相手SASAKIがコスメルに上陸!」なんてデカデカと載ってたりする。


・・・そりゃー地元の人は皆知ってるわな。


・・・最初は嬉しかったが、すぐに飽きた(笑)

自由な行動がはばかられることが、面倒だった。

日本だと後楽園ホールとか試合会場くらいで、街歩いてて声かけられることはそんなにない。

だからたまに声かけられたりしても全然嬉しいし対応もできるんだが。

街歩いてるだけで道行く人が自分を指差し、ササーキササーキと。

みんながみんな、自分の顔知ってて声かけられるってのは厄介だった。

うっかり立ちションもできやしねえ。(笑)

俺は有名人にはなれないな、と感じた。

・・・別に立ちションがしたいわけじゃないぞ。


8年前に日本タイトルを失った時、偶然来ていたコスメル。

その海の透明度は、未だに他で例を見ない。

ダイビングしてて、海中じゃなくて空中に浮いてるような錯覚に陥ったからね。

あの時普通の観光客として来てた俺が、こんなにも町で知られる人間になって戻ってこようとは。