年末。

松橋からメール。

昨年四月の試合で負けて、とっくに引退したと思われていた松橋。

すげえ通る声の持ち主。

必死に仲間のことを応援する。

帝拳興行の時、一番先頭で必死に帝拳選手を応援してたゴツイ男が、松橋だ。

俺の試合中も、トレーナーの声の他に具体的に聞こえる声は松橋の声だけだ。

もう新年明けて一昨年、ウクライナに挑戦しに行った時も、自費でいいから松橋を現地に連れて行こうと
思ってた。声がマジで通るからさ。一生懸命応援するし。

それ話したら会長が出してくれたけど。

俺の申し出を快諾してくれた松橋、休みをくれなければ辞めるとバイト先に言って
休みを取ってきてくれた。

聞く噂は色々あるが、そんなヤツ。


そんな松橋、なんとようやく引退の決意が固まったからと一斉送信の挨拶メール。

今まで決まってなかったのか!


難しいんだよなぁ。

ボクシングやめるの。

生きがいだからさ。

我々根っからボクサーに生まれついた人間の、生きる意味だからさ。

丸八ヶ月悶々としたまま過ごしてたんだな・・・。


本人の了承の下、抜粋。


>>あれですよ
一般世間で俗に言う『就活』ってやつですよ!!!
>>
32歳が就活!!(笑)
かなりの出遅れに老けたおしてますが、あれですよ
>>
負けないんですよ!!


安心しろ。

俺なんて35歳でまだ就活の目処すら立ってないぞ。



ボクサーは立ち上がるんです
諦めが悪いんです!!
>>
ただ、リングが変わってしまえば、皆の前に出ることはもうないんでね、
>>
四角いリングに立つことはもうないんでね、
>>
本当にごめんなさい
>>
チャンピオンになって皆の前でベルトを巻く事ができず、
本当にごめんなさい
>>
北海道の皆、ごめんなさい
>>
初めてグローブを付けた中学生の時からずっとずっと思い描いてきたチャンピオン
>>
アマチュアのじゃなくて、
>>
本物のプロボクシングのチャンピオン
>>
なれなかったのは自分が弱いから
>>
でもそんな弱い自分がここまで闘えたのは、
本当に皆さんのおかげ


そういや松橋はずば抜けた身体能力を持っていながら結局はタイトル取れずに
終わっちまった。

最初に松橋と知り合ったのなんて、俺が松橋のスパーリングパートナーとして帝拳に呼ばれたからだからね。

怪我にも泣かされてね。

ちなみに、俺が今まで手を合わせてきた中で、一番パンチがあったのは松橋。

幸治とスパーすれば幸治の方がありそうだけど、幸治とはマスしかやってないから。



ジムの先輩が、雑誌かブログか忘れたけど、こう言っていました

「ボクシング終わったあとの人生はオマケみたいなモンだ」

その通りだなと

ボクシング以外考えられないし、後先考えずただ強くなること、何を犠牲にしてでもつかみ取るっていう決意からの言葉だと


これ言ったの俺じゃねーか。

今もそう思ってるけど。

突然出てきてびっくりした。



でもね、

オマケって、ちょー魅力的

子供の頃、雑誌の付録が楽しみで、雑誌なんか一つも読まずに付録に目を輝かせてましたよ!!

お菓子のオマケが楽しみでお小遣全額注ぎ込んでましたよ!!

ビックリマン(解らない方ごめんなさい)のキラキラヘッドが出たときの喜びったらなかったですよ!!

さぁ!!
俺のオマケはどーなんだい!!

そう考えると楽しみなわけですよ


前向きだ。


しみじみ感じるものがあったメールだった。


いずれは来る、引退。


後悔のないように、全力で突っ走ろう。