地元、


長野でシャンソニエがやりたい。


それを叶えてくれたお店「グルービー」のマスターが亡くなった。


あんまり、突然で。


嘘みたいに。


マスターの店は、長野のJAZZのライブハウスの老舗で、


約30年の間、ずっと、そのお店に居た。


根が生えたみたいに、ずっと。


この春、奥さんが他界し、


尚更マスターは店にしがみつくようにいた。


ほとんど食べなくて、バーボンの濃いのを隠れながら、チビチビ飲んで、


大きな歯を見せて、いつでも笑っていた。


みんなに、酒を辞めろと云われても、



いい加減、病院に行きなと云われても、



動かなかった。


やっとの思いで皆が担ぎ出して、病院に行った。



マスターの思いもあり、先日の長野シャンソニエはスタッフの皆の力で臨時営業をした。


マスターがいつ帰ってきてもいいように。


いつ、フラリと店開けてもいいように。


エヘヘと笑いながら、店戻ると、皆も私も思っていた。


でも、マスターはエヘヘとしながら、彼方へ行ってしまった。


残された私たちは、マスター。


寂しいよ。


あれは冗談だよ。エヘヘと笑いながら、帰ってくるんじゃないかと思いながら、


現実にマスターの亡骸を見たら、もう、切なくなった。


ジャズが好きで、


シャンソンが好きで、


人が好きで、


お酒が何より好きなマスターと、


もうこの世で会えない。


その現実は、まだ、受け入れられない。


駄目だよ。


そんなの。。。


ずるいじゃない。



そう心で幾ら伝えても、マスターは笑顔のまま逝ってしまった。


一つ、長野の音楽財産が閉ざされてしまった。


マスター。


ぎりぎりまで良く頑張ってくれました。



長い月日の中には、


バブルで弾けた日も、


今日のお酒飲めなかった日もあるでしょう。


その極端な日を、音楽と笑顔で繋いでいたマスターの意思を、


私たちは、絶対忘れないから。


誰が何と言おうと、

絶対忘れないから。


人と音楽と酒をこよなく愛していたマスターのぶんまで、


私もまた歌うから…ね。


長野シャンソニエも絶対続けるからね。


マスター。


「まだまだ秀実ちゃんは生きて歌うよ」


皆が云うけど、


わからないわ。


長短じゃなくて、人間は生まれた以上、必ずあの世へ行くわ。


そちらに行くまで、私は生きて歌いぬくわ。


マスターみたいにエヘヘと笑いながらくぐり抜けて、歌を守るわ。


皆から、やめなさい!と云われたお酒。


そっちに行ったら、しこたま呑もうね。


天国にはきっと二日酔いなどないわ。


マスターが愛したグルービー。


このお店がどうなるか…なんて、それは残された私たちが考える事ですもの。


もう気に止んだりしないで!


ただ一つ。


我らが信州人の底力。


芸を身近に愛する底力。


魅せてやろうじゃないの。


それには、マスターの力が必要なの。


どうか、いつまでも側にいて下さい…。


今、私が飲んでいるフォアローゼスのロックの氷が、ガチャガチャと音を立てて溶けた…。


マスターの仕業ね…。


又の再会まで、


また…必ず…ね。