週刊文春はいい加減ではない | 笹井恵里子のブログ

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執筆は苦手、でも企画立案と取材が大好きなジャーナリストです。

 今日発売の週刊文春はまだ読んでいないのですが…ヤフコメなどで「完売までいくくらいなら、いくらでも週刊誌は嘘を書くだろう」というトーンのコメントが多くて驚いています。

 週刊誌は、少なくとも週刊文春はいい加減な雑誌ではありません。

 私の愛読書(笑)、元編集長の新谷学さんのご著書には「白くする取材を怠ってはいけない」という言葉が繰り返し出てきます。

 

<思い込みが強すぎたり、功を焦ったり、上からのプレッシャーがきつすぎると「ガセかもしれない」と疑う芽を摘んでしまうことがあるのだ。よって、現場には「白くする取材を忘れるな」と言っている。「黒」と「白」の「複眼」を持つ。噂に毛が生えた程度の裏付けでは絶対に書かないし、裁判で勝てるだけの取材を重ねる。「事実はこうに違いない」ではなく「事実はこうだ」と言い切れるまで取材を尽くすのだ。逆に言えば、そこまで事実を詰められなければ、潔く撤退する。いくら膨大な時間とお金と人手をかけたプロジェクトだったとしても、撤退する勇気をもつ。万が一、大誤報となったら、そのときこそ週刊文春の看板に取り返しのつかない大きな傷がついてしまうのだ。(『「週刊文春」編集長の仕事術』(ダイヤモンド社)210pより>

 

 かつて仕事で交流のあった人が週刊文春の右トップで記事になったことがありました。

 そこからさかのぼること一年前くらいだったか、当時の編集長に文春リークスに寄せられた内容を見せられて、「ここに書いてあることは事実かどうか」と尋ねられたことがあります。その内容は、私と文春の編集者をのぞいて、2人しか知らないことでした。それ自体はそれほど大したことではないのですが、おそらく今振り返れば、なんらかの証言を寄せたその人が信頼できる人物かどうか、その入り口としての確認だったのではないかなと思います(のちに記事になった内容と、私が確認されたことは全く関係のない内容だったので)。

 

 週刊文春は、おそらく気が遠くなるほどの裏付け取材を行っているだろうから「いい加減な記事は書かない」というのが一つと、また今回は女性たちといい信頼関係を築いてきたんだろうなと感じます。告発する側は、発売直前まで「本当にこの話を出していいのか」と心が揺れます。そこに寄り添いすぎては「白くする取材」に濁りが生じる上、女性側があとから「編集部に無理やり言わされた」と言ってしまう可能性もある。バランスをとるのが難しいのではないかと思います。きっとチームとしてもうまく機能していたんでしょう。

 ただ、記事の内容は読むのがつらいですね。だからこそ「週刊誌は嘘を言うに違いない」という風潮になってしまうのかも…。

 

「悩むが花」も終わってしまった今、私が週刊文春で欠かさず読んでいるのは将棋棋士・杉本昌隆さんの「師匠はつらいよ」です。将棋を知らなくても面白い。そして和みますのでオススメです。