「祭りのあと」
どうせすぐに死んでしまうって分かってるのに
なんでやっちゃうかなあ、金魚すくい
チョコバナナと
ヨーヨー風船で満足しとけば良かったのに
焼きトウモロコシとわたあめ、ピンクの袋入りの
それで充分だったでしょう、金魚をすくわなくても
SF小説みたいにタイムスリップして
あの日の自分を止めたい
「金魚をすくわないで。」って
「私は未来から来た、30年後のあなたです。
今、あなたがすくおうとしている一匹の金魚は
三日後に死にます。
買ったばかりの小さな金魚鉢を抱えてあなたは泣きながら
近所の公園の木の下に埋めに行くでしょう。」
だからすくわないで、
金魚を。
そうか私は
救いたかったのかもしれない
あの小さな桶の中に、閉じ込められた金魚たちを
あの日すくえた金魚は、一匹だけ
救ったつもりで閉じ込めたのだ、もっと小さな
金魚鉢の中に
もう戻れない
金魚は死んでしまったし
ここは現実だ
SF小説じゃないから
タイムマシーンは来ない
ここは未来じゃない
もう終わったのだ
あの日の祭りはもう
終わってしまったのだから
2025/6/1(日)
「祭りのあと」
@阿佐ヶ谷ロンサム
四組中三番手、30分間のステージの中で朗読
~セットリスト~
1 「祭りのあと」
2 いちごシロップ
3 夕日と勇気
4 月のトランプ
5 光の在処
6 空が消えた時
7 夕暮剥離
8 色のない声
9 地球が何回か廻った日
10 選択肢のその先
「ロンサムプレゼンツ、祭りのあと、
本日の三番手、笹田美紀でした。
ありがとうございました。」
以上