花びらのドレス | 何もない明日

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朗読人の独り言

 

 

 

 

「花びらのドレス」




「夢みたいな事ばかり言ってるんじゃない。」
と言っていた父が亡くなって
夢みたいな事ばかり話していた私は
ことしで51になる
花びらを千切りながら繰り返し呟く
夢は叶う
叶わない
叶う
叶わない
いずれにせよ生きている
夢から覚めぬまま
夢みたいな事ばかり
未だに話している




「夢みたいな事ばかり言ってるんじゃない。」
と言ってくれた父は、もういない
夢は叶う
叶わない
叶う
叶わない
花びらを千切りながらそれでも繰り返す
夢が叶うとも
叶わないとも
思わないまま千切り続けた花びらはいつしか
今年で51になる自分を覆いつくし
目には見えない馨しい衣装となって
踏み出す足と共に
ふうわりと舞う




目を見開いたまま
まだ見ている夢は
叶う
叶わない
叶う
叶わない
いずれにせよ生きている
花びらを千切りながら




2025年9日15日(月)
オープンマイク「詩で自由になりやがれ2」
北沢タウンホールにて朗読