ジンジャースライスラムバック | 何もない明日

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朗読人の独り言

 

 

 

 

一見普通の一軒家の二階でのイベントに
知り合いと知り合いのライブを観に行く
45ℓの半透明ゴミ袋が散らばる
謎のワンフロア
演者もお客も数人ずつ



演者は自分の出番が終了するとゴミ袋を拾い
床に転がる何かを
思い思いに詰めてゆく
袋を閉じたら次の演者のステージが始まる
順番に順番に
拾っては詰めて
終演時にはパンパンに詰まったゴミ袋が数個
それを持って皆で一階に降り
打ち上げが始まる



テーブルの上に置かれたメニュー表には
聴いた事もないようなドリンク名が並び
飛び交う言葉が
魔法の呪文のようで
「ジンジャースライスラムバック。」
と誰かが言った
それ以外の名前はすべて聞き取れなかったので
自分も誰かに倣ってそのドリンクを選ぶ
しばらくして運ばれてきたジンジャースライスラムバックは
黄金色の宇宙の底に
ジンジャーが渦を巻いていた



その場所は自分の家から一駅ほどだったので
「帰りは歩いて帰ろう。」
と他数人と歩き出す
知っているはずの道が
少しづつ渦を巻いてゆき
気付けば黄金色の
宇宙の底にいた
「もう帰れないのだ。」
そう思ったら
不思議と安心して
歩道橋の上で立ち止まった