眼科の待合室にて
「世界の絶景」とかいう雑誌をぺらぺら捲りながら
アンコールワットも
なんとか遺跡も
ほら、行ってみたくなるでしょう?
的な写真満載ですけども、
私が行く事はないんだろうなあ。
ちぐはぐなこの世界が
カチッと鳴る日は来るんだろうか。
音を立てて崩れるのではなく、
再生される日。
とか一人ぺらぺら捲るページの上で
知らない国の石像が薄ら笑うので、
睨み返してやった。
眼科の待合室で、何やってんだ。
*
あれ、今誰かチャンネル変えた?
と思った瞬間瞬きしたらいつもの朝で
あ、やっぱり夢落ちか、そりゃそうだよなあ。
だったらどうしよう!
ってくらいカチッと鳴った。
気がして。
雨が。
空が。
緑が。
こんなにも簡単に再生されるのか。
と思ったら怖くて。
「消えないで」と思った。
チャンネルが変わったのではない。
ボタンを押したのだ。
押したのは私で
私はあなたで
あなたは私で
私は
地面に見つけたボタンはボタンじゃなかった。
ボタンは内部にあるんだよね。
知らんぷりしてただけ。
知ってたよ。