光を聴きながら | 何もない明日

何もない明日

朗読人の独り言




眼科の待合室にて
「世界の絶景」とかいう雑誌をぺらぺら捲りながら
アンコールワットも
なんとか遺跡も
ほら、行ってみたくなるでしょう?
的な写真満載ですけども、
私が行く事はないんだろうなあ。
ちぐはぐなこの世界が
カチッと鳴る日は来るんだろうか。
音を立てて崩れるのではなく、
再生される日。



とか一人ぺらぺら捲るページの上で
知らない国の石像が薄ら笑うので、
睨み返してやった。
眼科の待合室で、何やってんだ。







あれ、今誰かチャンネル変えた?
と思った瞬間瞬きしたらいつもの朝で
あ、やっぱり夢落ちか、そりゃそうだよなあ。
だったらどうしよう!
ってくらいカチッと鳴った。
気がして。
雨が。
空が。
緑が。
こんなにも簡単に再生されるのか。



と思ったら怖くて。
「消えないで」と思った。
チャンネルが変わったのではない。
ボタンを押したのだ。



押したのは私で
私はあなたで
あなたは私で
私は



地面に見つけたボタンはボタンじゃなかった。
ボタンは内部にあるんだよね。
知らんぷりしてただけ。



知ってたよ。