フィラメント | 何もない明日

何もない明日

朗読人の独り言




「最後まであきらめない。」
確かにそう言った。
世界が終わる数時間前、
そう言った私に
あの人は笑ってこう言った。
「そうでなくっちゃ。」





インフルエンザ
ではなくただの風邪だった。
寒気と熱に交互に襲われながら
休みなのをいいことにずぶずぶと眠る。
時間の感覚の麻痺と夢の複雑さ。
終わったり死んだり別れたり始まったり
思い出そうとして思い出せなかったり
流れた時をなんとかして取り戻そうとしたり
振り出しに戻って
ダイスを床に叩きつけたり
している内に一日はゆっくりと傾き
まどろみの中沈む
薄闇に思い出す



「最後まであきらめない。」
確かにそう言った。
そうでなくっちゃ。
自分で自分に呟く。



あの人は一体誰だったんだろう。
似ている誰かの顔は、
なんとなく思い浮かぶのだけど。