メンタルヘルスに関する話題を、10月23日の日経朝刊から抜粋します。
やさしい こころと経済学第3章 メンタルヘルス(2)
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日本では、長時間労働がメンタルヘルスを悪化させる大きな原因の一つといわれます。
実は精神医学・疫学の先行研究では長時間労働と精神疾患の明示的な因果関係はあまり検出されていません。
我々が経済産業研究所のプロジェクトで実施した研究では、約700人を2年にわたり追跡調査したデータを活用し、個人に固有の要因を取り除いたうえで、メンタルヘルスの状態が労働時間や働き方に左右されるか統計的に解析しました。
その結果、労働時間の長時間化はメンタルヘルスの状態を悪化させる傾向があることがわかりました。
特に、サービス残業が長くなると労働者のメンタルヘルスの顕著な悪化が認められます。
この結果は、労働につりあうだけの対価(賃金・昇進・雇用保障など)がないと労働者のストレスが高まるという、医療社会学者のヨハネス・シーグリストの「努力―報酬不均衡モデル」とも整合しています。
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労災保険で、うつ病などのメンタルヘルスによる業務災害と認定されるための一つの大きなポイントは、長時間労働です。
長時間労働そのもので業務災害の認定を受ける場合もありますし、いじめやセクハラを受けたり、あるいは昇進や人事異動があった上で、それとともに長時間労働がある場合にも認定される場合もあります。
しかし、精神医学上では、長時間労働とメンタルヘルスには因果関係がないとのこと…驚きです。
一方で、経済学者の方たちによる追跡調査では、長時間労働がメンタルヘルスの状態を悪化させる傾向にあるとのこと。
なかでも、サービス残業がメンタルヘルスを引き越す可能性が高いとのことです。
たしかに、サービス残業を強いられると仕事の「やらされ感」が強くストレスもたまることでしょう。
時と場合によって、長時間労働は致し方がないものと思います。
それに対するお手当(残業手当)はきちんと支払い、少しでもストレスを除去することも会社の務めなのでしょう。