一度出向命令を出しておきながら、それを取り消した会社に関する記事を7月20日の日経朝刊から抜粋します。
リコー、出向取り消しへ 社員との訴訟、和解受け
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リコーは19日、退職勧奨を拒んだために子会社に出向させた社員への出向命令を取り消す方針を明らかにした。
出向した一部の社員が命令の無効確認などを求めて提訴し、このうち技術職だった男性社員2人について18日、実績や能力を生かせる職場に8月1日付で異動させるとの内容の和解が東京高裁で成立した。リコーはこれを受け、同時期に出向命令を出した社員の配置も見直すことにした。
リコーは2011年5月、グループ従業員約1万人の削減を発表。希望退職を募り、退職勧奨に応じなかった社員に子会社への出向を命じた。男性社員2人が起こした訴訟では、東京地裁が13年11月、「人事権の乱用」と認定し、出向命令は無効とする判決を出した。リコーは控訴したが、18日に和解に応じた。
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退職勧奨に応じなかった社員を一度出向させたものの、その出向命令を取り消すという事件です。
この裁判を担当した弁護士のお話を聞きましたが、どうやら出向を命じられた人はそれまでの仕事とは何の関係もない業務内容の子会社へ行かされ、立ち仕事や単純作業が中心の生産や物流の現場だったそうです。
出向に関する制約は法律で決まっています。労働契約法の第14条に書かれています。
(出向)
第14条 使用者が労働者に出向を命ずることができる場合において、当該出向の命令が、その必要性、対象労働者の選定に係る事情その他の事情に照らして、その権利を濫用したものと認められる場合には、当該命令は、無効とする。
出向にあたっては、
・出向させる業務上の必要性があるのか
・出向させる人の人選に合理性(対象人数、人選基準、人選目的等)があるのか
・出向命令が労働者に与えられる不利益の程度はどうか
などが考慮される必要があります。
これらが考慮されていないと、出向命令権自体が濫用と見られかねません。
大きな会社になると、グループ内で出向は頻繁に行われていると思いますが、特に上述の三つのポイントを踏み外すと権利濫用と受け取られかねませんので注意が必要です。