ここ最近CRSに基づく情報交換で得られたデーターをもとに、税務署からのお問い合わせが急増しているという話を聞く。
今年の3月時点ではまだ大がかりな動きが見られなかったが、ここに来て本格的な「海外資産狩り」「海外未申告所得狩り」が始まったようなので、海外に隠し資産や隠し所得のあるひとは警戒が必要だ。
税務署からどのような問い合わせを受けたとしても、まず一番大事なことはパニックに陥らないことだ。
以前のブログでも書いたように、国外財産調書を出していない人でも、昨年末の海外資産の時価評価残高が5,000万円以下であれば「国外財産調書提出のお願い」といものが届いても「申告すべき額の国外財産はない」と答えれば良いだけだが、国外財産が5,000万円以下であっても、その収入源泉が海外での未申告所得であると疑われている場合は、相当面倒なことになるので指摘しておきたい。
まず、CRS情報の中にはCRS加盟国から提供された課税居住国が日本であると見做された人の名前や住所や資産の内訳や年末残高といった個人を特定可能な情報がちりばめられており、資金の移動記録については補足されていないはずだが、日本居住者でありながら海外で無申告の所得や投資収益を隠している人が税務署から問い合わせを受けた場合には、その事を疑われている可能性がある。
もし、その所得隠しの疑いがなく5,000万円以上の未申告海外資産だけが疑われるケースであれば、通常は郵送で「国外財産調書提出のお願い」という封筒が届くだけだが、いきなり電話がかかってきて「海外に複数の口座をお持ちですね?」「その口座のステイトメント(明細)を提出して下さい」というようなことを言われた場合には海外での所得隠し(所得税脱税)や海外の生命保険の受取金の相続税脱税などを疑われていると考えた方が良いだろう。
今のところCRS案件に関して国税庁が直接調査した話は出てきておらず、相変わらず所轄の税務署からの問い合わせのようだが、その問い合わせが来たときに、それが「行政指導」なのか「税務調査」なのかを確認することも重要だ。
通常は「行政指導」であるはずだが、もしそれがはじめから「税務調査」だった場合にはほぼ逃げ道が無いと考えなければならない。
また税務職員が「質問検査権」があるといった場合には、「調査を行い資料の提供を求める法的根拠がある」ということを示しているという事になる。
依然としてCRS情報の証拠能力については、国税が直接動かないことから考えて、強制的に捜査するには十分な証拠能力がないという可能性は否めないが、所轄税務署が「質問検査権」を行使するのに十分な法的根拠となり得るとすれば脅威であり、恐怖そのものだ。
国税がCRS情報を地方の所轄税務署にばらまき、所轄税務署が「質問検査権」を行使して強制的に資金の動きがわかる銀行などのステイトメント(口座明細)を証拠として入手した瞬間に、所得隠しの実体は国税レベルで隠しようのない事実として暴かれるというカラクリなのだろう。
例えば、海外の取引業者で購入した仮想通貨が何十倍もの価格になったケースなども、このような調査によってその収益が暴かれてしまう。
CRS情報は残高(ストック)しか基本的に掴めないので、論理的には収入源泉や資金の移動(フロー)に税務署が疑問を持つトリガーになりにくいが、国内で未申告や少額申告であるにも関わらず、不自然に大きい額のCRSによる残高情報が来た場合には海外での所得隠しが疑われやすいかもしれない。
いずれにせよ、国内の申告所得とCRS情報を所轄の税務官が照らし合わせてそのギャップの余りに大きいケースを調査し始めているというのは事実のようだ。
海外での確定投資利益の未申告というケース以外には、例えば日本中に無数に居るであろう、RL360やITAといった海外金融商品の紹介者(イントロデューサー)と呼ばれる方々が、その紹介報酬を海外で受け取っていて所得申告していない場合などもこの調査の対象となり得る。
これは国内で紹介業を営んでヤミ収入をHSBC香港などで受け取っている人にとっては脅威そのものだ。
海外の隠し資産が5,000万円以上あろうが無かろうが、郵送で「国外財産調書提出のお願い」を受け取ったひとの場合、その対処はさほど難しくない。
5,000万円を超える資産があれば要求された書類を記入提出し、なければ無い旨を税務署に伝えればよい。
国税庁のHPにその記入の仕方も公示されている。
提出する際には、CRSで上がっていない情報まで敢えて開示する必要はないと思われるが、CRS情報で上がっている情報については全て記載しなければならない。
もし、単なる「国外財産調書提出のお願い」ではなく、海外における隠し所得を疑われている場合には、額にもよるだろうが隠しおおせない可能性が高い。
税務職員が「質問調査権」を行使しているのも関わらず、要求されている資料を提出しなかった場合には、悪質と見做されて追徴額が大きくなったり、調査年度のが長くなったり、最悪は罰則を受けることにもなるらしいので、安易に調査拒否はできない。
基本的に税務署の「質問検査権」を拒否することはできないとされているが、たとえ拒否したとしても、税務署員が強制捜査など物理的な行使に出ることは認められていないらしい。
調査拒否をして法的な処分を受ける場合には、国税通則法により、「正当な理由がないにも関わらず、資料の提示や提出を拒むほか、虚偽の記載をした帳簿書類等を提示・提出した場合には、1年以下の懲役又は50万円以下の罰金が科せられる」という罰則が定められている。
まだ問い合わせが来ていないが、心当たりがあるひとの今できる対処は、過去に遡って全ての所得を申告し納税するか、調査対象に上がる前に海外居住者(日本非居住者)になるかのどちらかしか無いようだ・・・。
もし、対処して居ないまま調査のお問い合わせが税務署から来てしまった場合には、海外税務に精通した税理士に相談するしかないが、たとえ相当な知識と力量を備えた税理士であっても、要求される口座明細の提出を拒否するなど「調査拒否」を支持してもらえる場合はなさそうだ。
せめて被害を最小限に抑えるということしかできないという絶望的な状況になるということだ。
事前に対処したいひとや、既に問い合わせを受けてしまって誰に相談したらよいか困っている人が居れば、信頼できる税理士を紹介することは可能だが、まずは海外投資の駆け込み寺「Gコンフィデンス」に相談してみて欲しい。G Confidence Inc. (g-confidence.com)
CRS情報に基づく脱税の調査は、増えているとは言えまだまだ事例が少なく、税務署の職員も手探りで進めているという話も聞く。
フローの掴めないCRS情報を基に、所轄の税務官が「質問調査権」を行使してフローの証拠物を半ば強制的に入手するというパターンがサクサク進むようになると、今まではゴミの山となりかねなかったCRS情報が、いきなり宝の山に化けることになる。
そんなことが進むようだと、日本の徴税はあの中国以上の社会主義的なシステムで、富裕層のみならず、一般市民をも海外投資に対してビクビクさせる恐怖の管理体制となってしまうことが懸念されるが、我々小市民は情報を共有してそういった体制から自己防御する術を探すほかない。
「パナマ文書」、「パラダイス文書」に次ぐ、ICIJによる今回の「パンドラ文書」公開情報では海外法人や海外信託を名義人とした高利回りのドル建て保険証券や億単位の巨額な保障のついた生命保険への加入などという部分までも暴かれているが、タックスヘイブンを活用した税逃れを取り締まろうとする当局の動きは10年前では考えられないような加速度を見せている。
