2年前の香港銀行口座開設事情だが、コロナ以降香港にも渡航が難しくなり(VISAか永住権を持っていない人は基本的に入国できない)、日本人でHSBCの口座開設に渡航する人もこの1年半は皆無となり、なんだか読んでいて懐かしさすら感じる。
コロナ渦が明けて香港に以前のように自由に渡航できるようになればまたHSBCの口座を開設する人が押し寄せたりするのだろうか?
(0005.HK) HSBC Holdings plcの株は1年前に爆下がりしてからはHK40ドル切ったことなかったが、1年ぶりにHK39ドル台まで下がっている。案外買いかも。
中国による昨年の「香港国家安全維持法制定」により、言論や表現の自由(特に政治的な内容)が制限さるようになり、日本人の多くは香港の金融事情にも不安を感じているようだが、逆に私を含め金融業界の人間の共通の見解は、結果として「金融事情は以前よりも信頼度を増し安定した」という認識だ。
「中国に支配されている香港の金融機関のどこが安全なんだ!?」と思われる人も多いだろうが、中国国という国の世界における金融支配力や国内だけで十分成り立つ経済力はこの数年で想像を超えるほど強固になりつつあり、その事は来年の北京オリンピックで世界に発信されることだろう。
私としては、もともとも予想通り、香港が1997年に中国に返還されて以降、それ以前はイギリスや西欧諸国の富を運用するタックスヘイブンであった香港のポジションは、いずれ中国を核とするアジアのタックスヘイブンに変貌するだろうとは思っていたが、この10年くらいを振り返ってみれば、確かに香港は中国人の為のタックスヘイブン化してきた。
国家安全維持法はイデオロギーの暴走をコントロールすることが目的であり、金融規制ではない。
しかし、この過去10年くらいの間に人民元を海外にジャブジャブと無尽蔵に流出し続けてきたまるで壊れた蛇口のような香港やマカオの金融システムを中国政府が制御し、海外で得られた利益を国内に戻して課税したいというの事実だろう。
実は、中国人が海外に外貨で移転した巨額な資金を中国に戻すことも容易くは無い。
この先10年は、海外から中国本土に対して壊れた蛇口のように資金が回流するための重要なポジションを香港は担っていくことになるだろう。
いずれにしても、香港という国やその国の金融システムが、たゆまなく膨大なお金の流れるスポットであるということに今も、昔も、これからも変わらないのではないかという気はしている。
日本人がカネの流れが澱んでしまった空白の30年を経て、カネの流れる音がどんなものかを忘れてしまったのは悲しいことだ。
香港では相変わらずカネが音を立てて流れている。