信託名義で偽装した海外生命保険の契約はいつまで続くのか? | Mr.Gの気まぐれ投資コラム

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香港を拠点に活動する個人投資家であり、自称「投資戦略予報士」Mr.Gがお伝えする海外投資の生情報。
ねだるな勝ち取れ、さすれば与えられん!

 

生命保険協会の公表資料によると、日本国内における2019年度の新規契約件数および契約高は以下のようになっており、今更ながらその契約数のあまりの多さに驚く。

日本人ってよほど保険好きなんだな。

 

新契約件数(転換後契約を含まない)の保険種類別の内訳は、医療保険(350 万件、構成比 25.6%)が最も多く、次いで定期保険(220 万件、同 16.1%)、終身保険(193 万件、同 14.1%)、 ガン保険(183 万件、同 13.4%)、養老保険(61 万件、同 4.5%)の順となっている。

運用性がキモの養老保険はあまり振るわず、定期と終身の生命保険が合計で400万件以上、医療保険とがん保険の合計が500万件以上と合計で1,000万件近くの新規契約が毎年締結されている。

定期保険の大半は、当時はまだ経費化可能なものが売られまくっていたので法人向けが大半だろうと思われる。

 

契約金額で見ると、新契約高(転換後契約を含まない)の保険種類別の内訳は、定期保険(26 兆 8,528 億円、 構成比 50.4%)が最も多く、次いで終身保険(10 兆 9,479 億円、同 20.6%)、変額保険(2 兆 7,600 億円、同 5.2%)、養老保険(2 兆 6,364 億円、同 5.0%)、こども保険(6,130 億円、同 1.2%)の順となっている。

 

2019年度の個人保険の保有契約件数は、全42社で1億8748万件にもなる。

これは、2018年度からは約619万件増え、2017年度からは約1446万件増えてることになる。
 


2019年度の保有契約件数が最も多いのは新契約件数と同様に日本生命で、前年比4.3%増の2,911.1万件となっている。

2番目はアフラック(2,414万8000件)、他に第一生命とかんぽ生命が1000万件を超えている。
 

アフラックは殆どが「がん保険」だろう。

 

それにしても日本生命のシェアは圧倒的だ。

日本の保険業界は実質的に日生1社で賄えるのではないかとすら思える。

 

保険業法では基本的に内閣総理大臣の許可なく買えないことになっている海外の生命保険や養老年金保険を契約している日本居住者は、多く見積もっても数万人しかいないだろう。

 

日生一社の1,000分の1=0.1%といったところか。

 

まあ、殆ど存在していないに近いゴミ市場と言える。

 

日本製のあらゆる商品の中で、生命保険だけは私個人的には全く魅力を感じない。

 

にも関わらず、これだけの人が保険を買っている日本という国の日本人という国民の愛国心は凄い。

 

いくら法律で規制されているからといって、これだけの内外格差の大きい理不尽な金融商品をこれだけの規模で殆どの国民が文句も言わず買っているというのは理解に苦しむ。

 

たぶん殆どのひとは海外の生命保険のスタンダードを知らないのだろうし、買えるのかどうかすら考えたこともないのだろう。

 

世の中に実は多くある大切な事について、我々一般大衆は何も知らないまま生きてそして知らないまま死んでいくのだ。

 

深刻な事態を知りながら死んでいくよりも、何も知らずに死んでいく方が幸せだったりする。

 

それだけ世の中には知らない方が良いことがいっぱいあるということだ。

 

しかし、その理不尽さに気付いてしまった人は、それを甘んじて受け入れて受け入れて不満を持ちながら死ぬことはないと思う。

 

日本の保険業法やそれによって政府と癒着している(保護されている)生命保険業界のカラクリに取り込まれたくないと思うのであれば、日本の生命保険を買わなければ良い。

 

しかし、日生に比べたったの0.1%くらいしか保有者のいない海外の生命保険ですら、もう日本居住者が買えるものの選択肢は僅かしかない。

 

香港で言えば、SUN LIFE香港とFTLifeの2社しか生命保険や養老年金を日本居住者に対して提供しておらず、それですら香港の信託名義で偽装しなければ購入できない。

 

香港のIFAにとって、香港保険の最大の販売先は中国本土だったが、ここ数年は中国当局の締め付けが厳しくなったのと、このコロナ問題で中国人が本土から香港に渡航できなくなった為、中国本土向けの生命保険ビジネスは壊滅的な打撃を受けている。

 

中国人富裕層が香港やアメリカの生命保険を購入する目的は、露骨に海外への資産移転であり、その金額的な規模も大きかったため、中国当局の規制対象となっても仕方なかった。

 

香港のIFAにも十分予想の付く展開だった筈だが、愚直な商売人である香港人にとって中国人富裕層に保険を勧めるビジネスは早い者勝ち売ったもの勝ちの状況だった為、渡航できない中国人に対して香港信託を名義人とした契約も相当ゴリゴリ売った奴らがいたに違いない。

 

そのせいかどうか、信託名義による中国人の契約にも中国当局のメスが入ったようだ。

 

中国本土の市場と比べれば、日本の市場などたかが知れているものの、日本の当局からもチクチク香港のIA(保険管監局)に圧力がかかるようで、香港のIAがいつ日本居住者の香港信託名義による偽装契約をストップさせるかは分らない。

 

香港の生命保険や養老年金商品が買えなくなれば、日本居住者が契約可能な生命保険はアメリカ系のユニバーサル保険のみとなるが、保障金額が億円単位ということを考えるとハードルはかなり高い。

 

香港の保険が買えなくなれば、このような情報を発信する人も居なくなるだろううから、香港保険なき後の日本人は、日本の保険と海外の保険の違いを知ることもなく生きて、そして死んでいくのだろう。

 

救いようのない現実であれば、その現実を知らない方が幸せだ。