10年を経てますます美しさを増す女帝トゥクタミシェワの凄さ | Mr.Gの気まぐれ投資コラム

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4月17日に丸善インテックアリーナ大阪で行われた「フィギュアスケート・世界国別対抗戦」でひときわ目を引いたのが、24歳になったエリザベータ・トゥクタミシェワ(ロシア)だった。

 

フリーでは冒頭で2本のトリプルアクセル(3回転半)を着氷し、1位のシェルバコワ、2位の坂本花織に次ぎ146・23点で3位だった。

 

大の日本好きだと言われるトゥクタミシェアは、「このプログラムは日本にささげるものであり、日本で演技を披露できたのは何よりうれしかった」と語った。

 

トゥクタミシェワに関しては、10年前の2011年GPファイナルの時にシニアに上リたてのあどけない14歳だったトゥクタミシェワの演技に私は注目していた。

 

あれから10年・・・。

いつの間にか、トゥクタミシェワはフィギュアスケート関係者の間で「Empress(女帝)リーザ(エリザベータの愛称)」と呼ばれるようになったそうだが、それは必ずしも他を寄せ付けないような圧倒的な強さで一世を風靡してきたからではない。

彼女が女帝と呼ばれるまでの道のりは想像を絶するような険しいものだったに違いない。

過去10年の間に、以下に紹介したようなティーンエイジャーのチャンピオンが入れ替わり立ち替わり活躍してきたロシア女子フィギュア界で、トゥクタミシェワは例外的に生き残ってきた。

 

元々彼女の最大のライバルは、2014年ソチオリンピックで金メダルを手にしたアデリナ・ソトニコワだった。

2011年の頃はソチオリンピック代表候補として注目されていたのはトゥクタミシェアの方だったのだが、2014年ソチオリンピックのシーズンには、トゥクタミシェワは不幸にも調子を崩し代表選考からもれた。

代わりにソトニコワと共に代表選手に選ばれたのは、2歳年下の天才少女、ユリア・リプニツカヤだった。

 

リプニツカヤが活躍してロシアが団体戦金メダル、そして個人戦でソトニコワが金メダルを手にしたのを、トゥクタミシェワはどのような思いで見ていたのか想像すると胸が痛む。

 

翌シーズン2015年、トゥクタミシェワのリベンジが始まった。

18歳になっていたトゥクタミシェワは、ジュニアの当時から練習していた3アクセルをプログラムに組み込んできたのだ。初戦のスケートアメリカでは2位だったが、その後出場した主要な大会すべてで優勝。初めてGPファイナル、欧州選手権のタイトルを手にし、上海世界選手権ではSPで3アクセルを成功させて、ついに世界の頂点に立った。

 

ところが翌シーズン2016年、トゥクタミシェワはロシア選手権で8位に終わり欧州選手権も世界選手権も、タイトルを守るために出場することは叶わなかった。

代わりに2016年の欧州タイトル、世界タイトルを手にしたのは、当時16歳だったエフゲニア・メドベデワだった。

 

 

翌シーズン2017年のロシア選手権は7位に終わり、またしてもオリンピックの代表選考に漏れた。

平昌オリンピックでは周知の通り、15歳のアリーナ・ザギトワが金メダル、メドベデワが銀メダルを手にした。

 

そして2019年秋には、また新たな世代のロシア女子ジュニアがシニアに上がってきた。

アリョーナ・コストルナヤ、アレクサンドラ・トゥルソワ、アンナ・シェルバコワ。

エテリ・トゥトベリーゼコーチの秘蔵っ子「妖精3人娘」である。

この3人は北京オリンピックに向けてレベルの違う最強の3人だ。

 

コストルナヤ

 

トゥルソワ16歳

 

シェルバコワ17歳

 

この妖精3人娘との競合の中、24歳になったトゥクタミシェワの今回の活躍は凄いというレベルを超えて驚きしかない。

 

彼女の根性というかスケートに対する熱意は敬服の念に堪えない。

そして純粋に妖艶で美しく熱い魅力を放って輝いている。

 

3月26日にストックホルムで行われた、北京冬季五輪の国・地域別の出場枠を懸けたフィギュアスケートの世界選手権では、ショートプログラム(SP)3位のエリザベータ・トゥクタミシェワ(FSR)が141・60点のフリー3位で合計220・46点の2位となり、優勝した2015年の上海世界選手権以来の6年ぶりの表彰台となった。

 

今回の女子メダリストの中で、シェルバコワは大会最終日に17歳になり、トゥルソワは16歳。24歳のトゥクタミシェワだけ、別な世代に属している。

 

練習ではすでに4トウループに成功し、4サルコウにも取り組んでいるという24歳の女帝、トゥクタミシェワだが、来季、3度目の正直となるオリンピックの大舞台に是非到達してほしい。

 

トゥクタミシェワはメダリスト会見で、北京五輪で表彰台に上るためには4回転が必要だと思うかと問われ「女子シングルのレベルはとても高く、4回転無しで金メダルを狙うのは不可能です」と答えている。

彼女自身練習では4回転トウループを着氷しているが、コロナ禍で練習場が閉鎖され、跳べなくなったという。

練習を再開したものの、今度は自身が新型コロナウイルスに感染、またも跳べなくなってしまったそうだ。

 

しかし不屈の彼女は、このシーズンオフにまた4回転に取り組むと思われる。

彼女のメッセージはフィギュアスケートの世界だけでなく、世界中の夢を追い求め続ける女性に向けられている。

「このままでは終われない」という熱い気持ち。

ジュニア上がりの天才たちには無いトゥクタミシェアの円熟した演技からは、その温度が伝わってくる。

 

日本をテーマにした今季のフリー『ねじまき鳥クロニクル』では、オンラインで振付を行いながらファンの意見を取り入れるという新しい試みにもチャレンジしている。

 

技術だけでは語れない何かで、トゥクタミシェワはオリンピック出場しその演技で我々に何かを伝えようとしているに違いない。