課税逃れ防止G20で合意へ | Mr.Gの気まぐれ投資コラム

Mr.Gの気まぐれ投資コラム

50代グダグダちょい悪おやじMr.Gの趣味と海外投資に関するコラムです。
香港を拠点に活動する個人投資家であり、自称「投資戦略予報士」Mr.Gがお伝えする海外投資の生情報。
ねだるな勝ち取れ、さすれば与えられん!

『日米欧など主要20ヵ国(G20)は資産隠しや税逃れを防ぐため、課税対象者が海外に持つ銀行口座の情報を得やすくする新たな仕組みをつくる。


22,23日にオーストラリアで開かれるG20財務省財務省・中央銀行総裁会議で合意し、2015年末までの導入を目指す。


把握の難しい海外の口座情報を税務当局がオンライン上で提供し合う。


主要国が連携し、課税回避の動きに歯止めをかける。』



(朝日新聞 2月8日朝刊)


どうも、OECD(経済協力開発機構)が、「非居住者の口座情報を多数の国で共有する」データベースの作成と、オンラインシステムの構築ルールをG20で提案するらしい。


日本居住者に対する「5000万円以上の海外資産申告義務付け」という訳のわからん法律が施行されることと絡んで、海外やタックスヘイブンを利用して脱税を安易に試みる人たちをビビらすには良いネタだ。


こういったパブリックな情報を正確に理解することは難しい。


実際にいくつか海外の銀行に口座を持ち、その銀行や金融機関から得られる生の情報と付き合わせて検証してみないことには現実に起こっていることや、これから起ころうとしていることを正しく理解することはできない。


このG20での議論にも、中国が参加する訳だが、役人のマネロン天国と化している中国をコントロールできるとはとても思えないし、また英国が参加することで英国圏のマン島、ケイマンなどのタックスヘイブンも対象になると言われているが、それについても今に始まったことではなく、欧州では既に欧州圏内での情報交換がすでに始まっており、それをさらに広げようという意図は分かるが、現実問題として個々の国の銀行がそれに対処可能かという実務的な問題については思った以上にハードルが高いのではないかと思われる。


既に香港に於いても、マネーロンダリング規制に関してはかなり監視が強まっており、それは主に対中国が課題であることも明白。


既に香港では、銀行だけではなくIFAでも、お金さえ払えば、オンラインで「危険と思われる口座」の検索システムに入ることが可能だ。


そこで重要なのは、どうやってその「危険と思われる口座」のデータベースが出来上がっているのかというシステムをまず理解することだ。


それと、そのようなシステムを金融機関が自ら活用する理由は、国単位の規制に対処する目的だけではなく、自社がその様な口座に関わることで被る可能性のあるトラブルのリスクを回避する自衛手段であるということだ。


ある日本人の知り合いが、「海外資産の申告義務」を恐れて、10年近く利用していた香港のHSBC口座を閉鎖し、5000万円以上の資金を現金化し、そしてスタンダードチャータード銀行に新たに口座を開設し、そこにそのキャッシュを入金したところ、スタンダードチャータード銀行からお問い合わせが来た・・・というような事例がある。


この場合、HSBC香港に存在する自分の資金の取引履歴を抹消することで、秘匿資産の機密性を高めようとしたわけだが、逆に10年間も関わりのあった口座を突然閉鎖し、現金を引き出したり、新たに同じ香港の他行に口座を開設してそこにまとまったキャッシュを入金したりという行為が、不自然で理由がはっきりしない怪しい取引と銀行からは見えてしまった・・・というところだろう。


まさに本末転倒だ。


HKMA(Hong Kong Monetary Authority)は独自に香港内すべての銀行における取引を監視しており、必然性の見当たらない不自然なお金の動きについては、複数の銀行を使ったとしても、パスポートナンバーなどID番号によって照合され、捕捉されてしまう。


日本における海外資産申告義務についても、基本は申告=課税ではないが、未申告で持ち出された現金による国外資産を申告した場合には、全額が利益と見なされて課税される可能性がある。


G20のはなしも含めてこのような当局の規制方針は、その方針を打ち出すことで、後ろめたいことをしているひとを動揺させ、後ろめたいお金に動きを起こし、その動きを捕捉しに行くといった傾向にある。


合理的な理由なく動くお金というのは、明らかに不審で、意外と捕捉しやすいという事だ。


犯罪者のマネーロンダリングですら、今や複雑に何か正当な取引で偽装されているので、それが明白に「麻薬の取引」であったり、「武器の取引」であったりすることが簡単にわかるわけもない。


そういった犯罪口座から自分たちを防御するために、金融機関は必死で情報を集め、それを共有しているのだ。


オフショア法人の口座や、ノミニー法人の口座などをいくら駆使したところで、常識的に考えられる合理的な資金の移動でなければ、同じような罠に容易にハマってしまい、口座がいきなり閉鎖され、パスポートナンバーがブラックリストのデーターベースに載るというようなことになってしまいかねない。