興味深い本を見つけました。
「食べログ事件」などで脚光を浴びるようになった「ステマ」というキーワードだが、ご存知のように「ステルス・マーケティング」の略であり、レーダーに引っかからずに飛ぶことができるステルス戦闘機が語源となっている。
この本は、ネット上で高度に展開されるこの「ステマ」と呼ばれる情報操作戦略をわかりやすく説明し、「ステマ」から自分を守る方法も伝授している。
私は、かなりの時間をブログ執筆に費やしてはいるが、残念ながらそれで食っていける「ブロガー」ではない。
この本に書かれているような、プロのステマ集団が存在する世界で、私ごときの個人が何を書いたところで、それが一部のひとたちには支持されたとしても、市場全体に対しては何の影響力も持ちえない。
海外投資に関するネット上の情報は、ネット上でモノを買うことすら一般的でなかった2002年に出版された橘玲さんの小説「マネーロンダリング」でも、登場人物のマコトが運営するサイトが炎上する様から予見されていたように、現在では星の数ほど情報が散らばっていて何が信頼できる情報なのか全くわからない。
情報が少なかった時代には、「フレンズプロビデント」で検索して上位に出てくるサイトはSEO対策も何もしていなくても常に私の書いているこのブログだったが、昨年フレンズプロビデントが事実上日本市場から全面撤退するまでの数年間は、ありとあらゆるブログやサイトが出現し、最後には2ちゃんねるの「フレンズプロビデントを語るスレ」というシリーズが出現し、1000スレッドxPART11まで進行した。
結果としてその風評の被害にあったフレンズプロビデントは、日本人市場を切り捨てる判断をし、日本人はその貴重なチャンスを失ってしまったわけだが、まさしくステマの毒が回った典型的かつ歴史的にも重大な事件と言える。
この、「ブラックマーケティング」を読めば、このようなステルスマーケティングを仕掛ける側の戦略やその見破り方も出ているので参考になるだろう。
海外投資の世界は既にステマの海に沈んでいると思うが、特にタチが悪いのは本でも紹介されている「逆ステマ」と呼ばれる悪意に満ちたものだ。
市場に、AとBというふたつの商品しかない場合を想定して、Aのシェアが90%、Bのシェアが10%だとすると、マイノリティーであるBを売っている業者が、Aの風評を流し、Aが売れなくなった分を取ろうというような戦略がまかり通っているのだ。
例えば、「ロイヤルロンドン」で検索すると、下の方にこのブログも出てくるかもしれないが、上位検索に引っかかってくるサイトには、必ず「保険業法違反で違法な商品である」という記事が出てくるだろう。
これは真実ではないし、その意図は、保険証券ではないCRバージョンを持つハンサードか保険ではないコーンヒルを支援するための情報操作であると考えられる。
また、「ハンサード」で検索すれば、大量のサイトが出てくるが、たぶん私が書いている記事以外は殆どポジティブな意見しか述べられていないことがわかるだろう。
こういった仕掛けを打つには、相当の費用をかけた、専門の部隊による細かな作業が必要だ。
昔からサクラと呼ばれるものや、広告代理店が有名人にさりげなく商品を露出させて宣伝する手法というのは存在しており、すでに当たり前の事なのかもしれないが、ネット社会になり、より高度で複雑で、時に極めて悪質で悪意に満ちた口コミ宣伝手法「ステマ」があちこちにわなを仕掛けている。
それにまんまとはまってしまう我々消費者は、実は無意識のうちに、心のどこかで、「自分の欲しい情報を探し」、「自分の欲しい情報を信用する」という部分があり、それがステマを蔓延させる原因になっているというこの「ブラックマーケティング」の著者の意見には考えさせられる。