日本ではアベノミクスと呼ばれる金融緩和政策により、急激な円安と株高が起こっています。
そして、円-ドルの為替レートはUS1ドル=100円に限りなく近づいている。
US1ドル=100円の壁を超えるのもおそらく時間の問題でしょう。
株価に関しては、日本株を買っておけば毎月どんどん値上がりする状況を目の当たりにして、多くの人たちが、アベノミクスバンザイと浮かれているように見えます。
オフショア投資をしている人たちの中にも、この数年あまりふるわない中国をはじめとする新興国のファンドと比べて、「こんなことなら日本で株を買っておけばよかった」と思っているひとも多いことでしょう。
国内の不動産に関しても、特定の地域の特定の物件という限定性はあるものの、ある種のバブルが発生しつつあるようで、不動産業界の人たちは目の色が変わっています。
消費税が上がることを考えると、新築の不動産やマンションもその前に買っておいた方が得だという心理が働くことは間違いなく、今年中にどんどん作って、どんどん売らねば、という風潮になるはずです。
売り手市場下では、値段は高くなりがちですから、結果としては高い買い物をすることになると思いますが。
しかし、冷静になって考えてみると、「我々はこんなことで浮かれていていいのか?」とうすら寒いものを感じざるを得ません。
このところの日本株の高騰は、外貨で収入を得て主にUSドルで投資をしている外国人の視点からすると、同じく急落している円の為替レートを考えると、投資機会としては微妙です。
日本国内の不動産に関しても同様と言わざるを得ません。
さらに、課税のトラップが潜んでいる訳ですから、日本の政府からすれば、金融緩和によってフローを上げて課税額が増えれば良いという、日本円の閉鎖空間だけを考えた政策が成り立つのかもしれませんが、日本国民全体としては、たとえ平均して円建ての投資で株や不動産を買って1年で30%の利益が出るとしても、1ドル=70円が1ドル=120円になってしまうとすれば、国際的に見れば国民の資産は目減りしたことになってしまいます。
日本国の会計は日本円ベースで行われている訳ですから、国民の資産が国際的に目減りしようがどうでもいいという事なのでしょうか?
日本政府の露骨な円安政策に対して、米国をはじめとする諸外国が批判をするとすれば、それは円安によって日本企業が国内で生産して輸出する商品が不平等に価格的に有利になるという観点よりは、実際には日本国内の事しか考えていない身勝手な行動によって、将来引き起こされるかもしれない世界的な金融危機の可能性というものを見据えての批判と言えるかもしれません。
日経平均株価が年末までに2万円を突破することが確実だとすれば、日本人の殆どはこぞって日本株に投資をするでしょうが、ドル円が1ドル=200円には絶対にならないという保証が無ければ、USドルで投資をする海外投資家にとっては殆ど魅力が無いのです。
1ドルがいったいいくらまで円安になるかはわかりませんが、もみ合いつつもいずれ100円を突破し、120円くらいまで一気に行ったとしても今の日本ではだれも驚かないだろうし、それを悲しむひとも少ないでしょう。
1年目を振り返ってみれば、1ドルはまだ80円台で、それ以上の円高になることを恐れているひとの方が圧倒的に多かったと思います。
過去10年を振り返ってみれば、経済状況的には円安が予想されつつも、それに反して円高が進行した10年でした。
これからの数年で、予想以上の円安が進行したとしても大して驚くことでもありませんし、それが絶対に起こらないとも言えません。
目の前で進行していることを、この狭い島国のなかで、日本円だけを基軸に観るというのはとても危険な事です。
このブログを読んでおられる、海外投資を学ぶ賢明な方々にはそのことをしっかり心に留めておいて頂きたと思います。
『浮かれるな!これは崩壊の序曲かもしれない。』
「アベノミクス」が一部では「アベノリスク」とも言われていることも覚えておいて欲しいことです。
何がチャンスで何がリスクなのか?を見極めることは簡単ではありません。
一般的には誰の目にもチャンスと思える事象の裏側には、常にそれを上回るリスクが隠れているものです。