前回、ニュージーランドの銀行らしきものを利用したスキームに対して注意を促しましたが、その背景にあるFSP(ファイナンシャルサービスプロバイダー)という認可制度について説明したいと思います。
これを理解しておくと、なぜ聞いたことのない銀行らしきものの口座が簡単に開設でき、それを利用した投資案件を提供する人たちが次々に現れるのかよくわかると思います。
ニュージーランドでは「国内を営業対象としないことを条件」に、中央銀行(ニュージーランド準備銀行)の許認可を必要とせずに銀行業を営むことが出来るフルバンキングライセンスの発行を特別に認めており、このライセンスにより銀行事業者となることで、中央銀行登録に必要なあらゆる制約や規制を回避することが可能となり今まで手の届かなかったビジネスに容易に取り組むことが可能となっています。
このFSP法人を利用すると以下の様な業務サービスを、ニュージーランド非居住者に対して提供できるようです。
1.第三者からの資金の受け入れ(預金)
2.定期預金
3.投資助言業
4.投資運用業(ファンド組成/運用)
5.与信(クレジットサービス)
6.貸付(ローンサービス)、担保融資
7.リース
8.両替業
9.店頭取引(外国為替[FXブローカー]、株式[証券ブローカー]、デリバティブ商品、等)
10.送金代行
11.カード発行
12.電子マネー
設立条件については以下の様に非常にハードルの低いものです。
・払込資本金: 不要
・取締役: NZ国内/国外を問わず - 最低1人
・株主: NZ国内/国外、個人/法人を問わず - 最低1株主
・FSP(金融サービスプロバイダー)登録: 必要
・オフィス: FSP登録要件としてNZ国内にバーチャルではないオフィスが必要
おそらく、1000万円程度の費用でFSP法人を設立することが可能と思われます。
このようなニュージーランド独自の銀行とほぼ同等のサービスを提供可能なFSP法人制度を利用する投資スキームが全て詐欺であるとは断定できませんが、極めて悪用しやすいものであることは事実でしょう。
特に、流行の「配当型FXファンド」のようなものとの組み合わせがいちばん危険な匂いがします。
守秘性の高いオフショア法人なども、悪用の意図があれば詐欺への転用が容易だと言えますが、全てはそのスキームそのものに潜む企画者の意図がどういうものか?というところを読むしかないでしょう。
私はニュージーランドのFSPは企画もしませんし、活用もしません。