すみません、急にずっと放置していた
いんざるーむの続きを
書きたくなってしまいました…
久しぶりすぎなので…
今までのあらすじ、
下記にまとめておきました!(笑)
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<3行で分かる①のあらすじ>
サラリーマンの智くんは、
お隣に住むひきこもりのニノちゃんと
うっかり一線を越えてしまいました。
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いんざるーむ②
大野智、社会人三年目。
週半ばの水曜日、
昼休みから戻ると、部長に呼ばれた。
「さっき蕎麦屋でN製版の社長に会ってな、
シュレッダー調子悪いから見て欲しいって。
…まあ、それは口実でお前に話相手になって
欲しいだけだろ。
ちょっと顔出してやってくれ」
N製版は会社から歩いて10分くらいの
ところにある小さな製版所だ。
「わかりました、今から行ってきます」
「ん、ゆっくりしてきていいぞ」
俺の仕事は業務用シュレッダーの営業。
と言っても、俺の所属する第二営業部は
専らアフターケアを担当してる部署だから、
お得意さんを回ってメンテナンスをするのが
主な仕事だ。
だから口下手な俺でもなんとかなってる。
別にシュレッダーに特別な思い入れがあった
わけじゃない。ただ何社も受けた就職活動で
唯一内定をもらったのがこの会社だっただけ。
それでも毎日シュレッダーを見続けて三年目、
ようやく仕事にも慣れてきて、
楽しさが少し分かってきたところだった。
N製版に着くと、社長が笑顔で迎えてくれた。
社長は70歳を過ぎて未だ現役で、
自ら現場に立ってこの製版所を仕切っている。
そして、なぜか俺のことを孫のように
可愛がってくれていた。
だから俺も社長と話すのを楽しみにしていた。
一応ひと通りシュレッダーを点検して、
それから社長のお茶に付き合った。
デジタル化によって使われなくなった
昔ながらの大きな製版台をテーブル代わりに
お茶を飲む。
「今週はもう山を越えたんですか」
「いや、今、校了待ちだよ」
「じゃあ、今夜は大変ですね」
跡取り息子が頼りないからいつまでも
引退できないよ、っていう社長の愚痴を
聞きながら、このお茶の時間が少しでも
忙しい社長の息抜きになればいいなと思った。
少し残業してから、スーパーで30%オフに
なっていた弁当を買って家路についた。
自分の部屋のドアの前に立ち、
鍵を差し込みながら、ふと
視線を隣の部屋のドアへと向けた。
…ニノ…
あれ以来、一度も顔を合わせていない。
隣に住んでいるといっても、
外に出ないニノとはばったり会うことも
ないし、連絡先も交換しなかった。
普通に生活していると…
驚くほど接点ないんだな…
日常に戻ると、あの土日の出来事は
夢だったんじゃないかとさえ思えてくる。
明るいご近所付き合いなんて、
やっぱり幻想なのか…
なんか寂しいな…
そう思いながらも、
日々は過ぎていき―――
あっと言う間に週末になっていた。
金曜日の夜。
部屋で飲みながらテレビを見ていたら、
ベランダの窓の方からコツン、と音がした。
気のせいかと思いつつ見ていると、
もう一度コツンと何かが当たる音…
気のせいじゃない…
頭にひとつの可能性が浮かんで、
慌てて窓を開けて、ベランダに出た。
びゅう、と音を立てる風に目を細めつつ
隣の部屋のベランダを見ると、
あ…!
そこには、ベランダの柵に寄りかかって
こちらを覗いている隣人―――
「こんばんは、大野さん」
月の光の下、微笑むニノは、
やっぱりどこか儚げで、
そして、とてもきれいだった。
「ニノ…」
会いたかった、と言いそうになったのを、
なんとか口に出さずに飲み込んだ。