Dear Snow 8 | シークレットサイン *嵐大宮妄想小説*

シークレットサイン *嵐大宮妄想小説*

嵐さん大好き、サトシックの妄想ブログです。
今日もリグレットと向き合いながら、
主に大宮の腐った妄想小説を書いています。

 

 

 

 

 

 

雪の積もった山道を、
足元に気を付けながら登っていく。


この山を越えれば、海に面した場所にある
北方基地が見えるはず。


そこに、あの人は、いるのだろうか…


もし北方基地の隊長が、
本当にあの大野さんだったら…


その時俺は、一体どうするつもりなのか。
自分でも、分からなかった。


俺が北方基地に届ける伝令の内容は


―――『待機、敵襲の場合は応戦』


そのまま基地にいて敵襲に備えろ、
敵襲の場合は、援軍と物資を送るから
その場で応戦して持ちこたえろ、
―――ということだ。


そして実際は…


近日中に、海の向こうから敵軍がこの基地
を襲撃することが確実視されている。


その時、北方基地に求められている役割は
『足止め』と『時間稼ぎ』。


囮となって、全滅するまでの数日、
敵軍を引き付けておいてもらいたい。
もちろん待っても援軍も物資も来ない。
最初から全滅することを見越した役割だ。


もし大野さんがいたなら…


全滅すると分かっている基地に
大野さんを残しておくわけにはいかない。


それなら…大野さんだけ逃がす?


でも何と言って…?


本当のことを言って、
万が一それを他の隊員たちに知られたら、
今回の作戦自体が危うくなる。


―――って、


我ながら、何という考え…


…やめよう。


とにかく基地に行って自分の目で確かめて
…どうするかは、それから考えよう。




新雪に足を取られながらも何とか山を
越えると、海の手前に広がる平地に陣する
北方基地が見えた。


基地といっても、本部基地のように建物が
あるわけではなく、密集したテントが並ぶ
駐屯地だった。


駐屯地に近付くと、
すぐに見張りに止められた。


「本部からの伝令です」


そう言って、階級章と伝令章を指し示すと
すぐに敬礼が返って来た。


「ご苦労様です」

「この基地の隊長はどちらに?」

「隊長は岬で釣りをしております。
ご案内しましょう」


…釣り?


駐屯中に隊長自ら釣りをするなど、
聞いたことがなかった。


食料に困っているということか?
確かに北方基地には満足な物資の補給が
されていないけど…


自分の記憶の中の大野さん像とも
結びつかなかった。


釣りの話なんて、聞いた覚えがない…
やっぱり人違いなのか?


戸惑いながらも、
案内されるまま付いて行く。


「隊長は、あちらに」


案内してくれた隊員が指し示す方を見ると
海にせり出した岬の先端に座って釣り糸を
垂らす、その人の背中が見えた。


「……」


50メートルほど離れた場所に立ちつくす
俺の気配に気が付いたその人が、
ゆっくりとした動作で振り向いた。


そして、眠そうな目で俺を見て…
次の瞬間、驚きの表情を浮かべて固まった。


―――不思議だった。


20年の月日が流れているのに…


なのに、ひと目で分かった。
振り向く前に、確信してた。


あなたも、俺のこと分かったんだね、
大野さん…


目の前の視界が滲む。


と、同時に眩暈がして、白黒だった世界が
急に鮮やかな色に塗り替えられていく。


ずっと止まったままだった時計の針が、
20年の時を経て、今―――


再び動き出す音が聞こえた。