椅子に座る総司令官の前に立つと、
脂ぎった禿げ頭の下の濁った眼に
値踏みするように上から下まで見られて、
今更ながらこの選択を後悔しそうになった。
でも…
基地を出て北方に向かうためには
この男の勅令が要る。
そのためなら…
もし再び大野さんに会える可能性が
1%でもあるのなら…
俺はそのためなら、何だって出来る。
司令官の足の間に跪き、窮屈そうな
ズボンのファスナーに手をかけた。
司令官の喉が鳴る。
「…ひとつ、お願いがあります」
ゆっくりとファスナーを下ろしながら、
総司令官を見上げた。
「早速おねだりか…言ってみろ」
「北方基地の視察に行きたいのです。
私を北方に行かせてください」
「北方…?なぜそんな所に?」
「……」
「…逢いたい男でもいるのか」
「いえ、ただ…何も知らずに
私の作戦の捨て駒になる者たちが、
どんな顔をして死んでいくのか…
見てみたくなったんです」
我ながら、残酷なくらい綺麗に笑えたと
思う。
総司令官は一瞬見惚れたように目を見開き、
それから口元を緩めた。
「ふっ…まあ、良いだろう。
私の名前で勅令の命令書を書いてやる。
ただし…」
急に後頭部に総司令官の手が回り、
乱暴に頭を引き寄せられた。
目の前に、総司令官のモノが迫る。
「…この私を、満足させられたらな」
くっくっと、卑下た笑い声が頭上で響き、
俺は一切の感情に蓋をして、
従順な犬のように、口を開けた。