波を蹴って水を舞い上がらせてみる。
ふいにあなたが私の名前を呼んだ。
「なに?」
「ちょっと聞いてほしい話があるから、さ。こっちきてほしい」
浮かない顔してなんだろう。
勘を働かせれば出てくる答えには耳をふさいで、いざ、潤のもとへ駆け寄った。
聞きたくない。
でも、潤を信じてる。
――大丈夫。だよね。
「なに、どしたの?」
「最近、仕事がうまくいきだして、つってもまだまだ俺なんか戦力外なんだけど」
と、話を知らない私でもわかるくらい遠回りに話し始めた。
そんなに言い出しにくいことって。
「それで、今度の仕事が成功して、親にも認めてもらえたら」
海外出張とか?
「結婚しよう」
……。
すっと潤に手を取られて、きれいな指によってはめられたのはきれいな指輪。
「……結婚してください」
ばか、私。早く反応しないから言い直させてしまった。
「俺、年下だし。まだまだガキだし、こんなやつだけど」
――俺のそばで、俺と一緒に、いてほしい。
「……はい、お願いします」
返事は平凡なものになってしまった。
視線が自分の指と潤の見開いた瞳を行き来する。
潤の思いが、気持ちがうれしかった。
こんな私と一緒にいてくれるなんて、きっと、絶対最後の人。
この機会を不意にするバカがいるだろうか。
少なくとも私はしたくない。
したくないよ。
「ありがとう、潤」