今、読んでいる「経験する機械」(アンディ・クラーク著)の焦眉のフレーズは、「予測する脳」です。

 

著者は、認知科学の世界的第一人者ということですが、まあ、その洞察力の鋭いことったらありません。今朝も、「拡張された心」という概念が、既に古臭い時代遅れの概念であることを、「予測する脳」というフレーズで鋭く批判。

 

曰く、行動の内的側面と外的側面が、いかに状況に応じて適切に融合されているかという問いには、「拡張された心」という概念では答えられなかった、とのこと。それに答えるのが「予測する脳」という訳です。つまり、予測する脳は、行動の実行によって目標に近づけるよう、どの程度の不確実性があるかを絶えず見積もっているとのこと。

 

ちょっと飛躍するかも知れませんが、この「予測する脳」を体現して製品化したのが、ジョブズのiPhoneだったのではないかと思います。予測することによって、人の行動の先行きを見通す力が増強される、という点でiPhoneなるツールの性格を見ていくと、これはネットの普及によって花開いたコミュニケーションツールであるとの通説があまりに一般的過ぎて、少し的を外しているのではないかと思うのです。

 

そうです。人間は行動の結果としての不確実性を絶えず嫌うのが本質的な性格とも言えます。

 

例えば、誰かと会うために外出するとします。その時、スマホがあれば、相手が急に体調が悪くなったという情報が、移動途中に瞬時に伝わります。その情報により人は、行動の変化を瞬時に行えることになります。これが不確実性を減らす脳の働きとよく同期している訳ですね。

 

単に、相手とコミュニケーションが取れる、そのことだけであれば、従来の電話でも良かった訳ですが、電話だと移動中の瞬時の判断には役立ちません。

 

こういう不確実性の逓減という観点から、今のスマホまた将来の量子技術の技術的深度を推し量ると、社会的課題を巡る議論の別の側面が見えてくるのかも知れません。

 

以上です。