大切な人を殺害されても、殺害した相手が、諸般の事情で正当に裁かれない。それは、被害者遺族にとっては、本当に地獄だろう。正に被害者遺族のブログのタイトル『不可解な天秤』だ。
この作品には、そんな重いテ－マが根底に流れていた。そのような被害者遺族が連帯する気持ちも、痛いほどよく分かる。駐輪場のトラブルで大切な息子を傷害致死で殺した犯人が、償いに点字ブロックの上に止められた自転車を移動させていたというエピソ－ドには、少し救われた。
連続殺人事件の犯人は、思いもかけない人物だったが、彼女も「罪と罰」の狭間で苦しんでの犯行だったのだろう。今度こそ正当に罪を償ってほしい。
新田警部が辞職し、警備部マネ－ジャ－として本物のホテルマンになったラストにはビックリした。山岸尚美の「ようこそ、ホテル・コルテシア東京へ」という言葉も粋だった。今後２人の距離はますます縮まるだろう。続編を期待したい。