私は美術館で、ピカソの絵を何度も観た。ピカソ展にも2回足を運んだことがある。正直言って絵の内容は意味不明で、その価値が理解できなかった。しかし、この小説を読み、ピカソは全身全霊を傾けて創作活動に励んでいたことが分かり、感動した。もう1度ピカソの絵をじっくり鑑賞してみたいと思った。また、ピカソをサポ-トしたり、ピカソの絵を守ったり、ピカソの絵を世に広めようとした人々の努力も、並大抵ではないと感じた。
ピカソは絵筆という武器をもって、「戦争」の悲惨さと戦っていたのだ。正に「芸術は、敵に立ち向かうための武器」なのだ。ゲルニカの悲劇を描いた当時のピカソの反戦への思いが、ひしひしと伝わってきた。ピカソを献身的にサポ-トしたドラ・マ-ルも、
ピカソの描いた「ゲルニカ」を戦禍から守るために渾身の働きをしたバルド・イグナシオも、反戦と民主的な国家への思いは共通していた。
21世紀にピカソ展を企画したキュレ-タ-の八神瑶子にも、テロで傷つき戦争へと傾きかけるアメリカに、平和への道へ引き返して欲しいという、ピカソに通じる切なる願いがあったと思う。彼女は子供も頃から「ゲルニカ」の魅力とメッセ-ジに惹かれていた。その感性は凄い。瑶子をテロリストから救った女性マイテが、ピカソとドラ・マ-ルの孫娘だというのは、奇しき因縁だ。マイテの安否が気にかかる。
私もいつかスペインの美術館で、本物の「ゲルニカ」を観てみたくなった。